敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
『代わりにやってきたスタッフがどうしてよりにもよって君みたいな若い女性なんだ』

 悔しくてやるせないが、あのときの社長の怒りが、これで腑に落ちる。代表である伯母を指名したのも、その代わりにやってきた私に嫌悪感を示したのも、そんな経験をしていたのなら当たり前だ。

 社長が私の仕事ぶりを評価してくれたのは純粋に嬉しいが、私が担当で彼は本当にいいのだろうか。社長をうかがうと、どういうわけか彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。

 好き勝手言いすぎたかと謝罪の言葉を口にしようとする。しかし口を開いたのは彼が先だった。

「まさか怒るのまで代行してくれるとはな」

 言ってから社長は噴き出し、一転して笑い出す。私としては、状況に頭がついていかずぽかんとするばかりだ。しかし冷静に社長の言葉を理解すると、頬が一瞬で熱くなる。どうして当事者でもない私が怒りをぶちまけているのか。滑稽でしかない。

「す、すみません」

 さっきとは違う意味で胸が苦しくなる。余計な発言に今は後悔しかない。すると社長は笑いを収め、こちらを真っすぐに見てきた。

「いいや、ありがとう。俺の気持ちを汲んでくれて」

 彼の柔らかい表情に心臓が跳ね上がり、とっさに視線を逸らす。これでは失礼だ。けれどまともに顔を見られない。

 頬に手を遣り、早くいつも通り振る舞わなければと言い聞かせた。息を整え、意を決して言う。

「あの、私は絶対に社――進藤さまのプライベートには口を出しませんし、関わったりしません。依頼された仕事だけを全う しますから、心配しないでください」

 宣言するように言い切る。
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