敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 虚を衝かれた顔をする社長に、私はさらに畳みかけていく。

「業務上必要だと感じたときだけ質問をしますが、それでも答えたくない場合は無理に回答する必要はありません。要望などありましたら、遠慮なくおっしゃってください。すべては叶えられなくても最善は尽くしますので」

 少しでも彼の不安を取り除きたくて、必死だった。苦い経験を経て、それでも私の仕事ぶりを評価してくれたのだ。そんな彼を裏切るような真似は絶対にしない。

 早口で捲し立てると社長が目を瞬かせたあと、こちらをじっと見つめてきた。

「ならさっそく、要望をひとつ」

 抑揚のない低い声で呟かれ、思わず息を呑む。

「なんでしょうか?」

 同じ調子で私も返す。一瞬、耳鳴りがするほどの静寂がふたりの間に下りた。

「質問させてほしいんだ」

「え?」

 ところが、社長の口から紡がれたのは、予想外の言葉だった。口調も幾分か軽い。

「沢渡さんがシャッツィであえて契約社員でいるのは、この仕事をするためなのか?」

 前回も同じようなことを尋ねられたが、これはあまりにも個人的な内容だろう。

「そ、そういった質問は……」

「ビジネスライクに接してくれるのはとてもありがたいが、俺が君に継続して仕事を頼もうと思ったのは、うちの社員だからでもあるんだ」

 同じ断り文句を告げようとしたら社長に先回りされる。そして社長の口から語られた理由にいささか心が揺れた。
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