敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「お、お口に合うかわかりませんが……」

「ぜひ、いただきたいね。元々俺のために持ってきてくれたんだろう?」

 どぎまぎして答えると間髪を容れずに返事があった。確信めいた聞き方に、一瞬言葉に詰まる。そこまで期待されるようなものではないけれど、持ってきて正しかったのだと胸を撫で下ろす。

 今度こそ私はそそくさとキッチンに足を運び、コーヒーを淹れる準備を始めた。

 さっきまで美奈子さんが座っていた席に社長が腰を下ろし、私たちは向かい合う。社長にはコーヒーとミルクを、私は二杯目になるので紅茶を用意した。

「今日は突然、迷惑をかけたな」

 マンションの点検が無事に終わったことを告げたあと、社長が申し訳なさそうに切り出した。

「い、いいえ。あの……破談になったというのは?」

 聞いていいものかと迷いつつ口にする。かなり個人的でセンシティブな話題だが、巻き込まれた身としては聞いておくべきだろう。

「いろいろあってね。俺がこの関係は続けられないと判断したんだ」

 慎重に尋ねた私とは正反対に、社長はあっけらかんと答えた。私としては反応に困る。

「それは……」

 なにがあったのかはわからないが、こういうとき、なんて声をかけたらいいのだろう。まったくの部外者なのに、私の方が動揺している。
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