敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「いろいろとご心配をおかけして申し訳ありません。ですが娘さんは必ず幸せにしますし、手放すことなど考えていません。私には未希さんが必要なんです」

 あまりにも淀みなく隼人さんが言い切るので、とっさにすぐそばにある彼の横顔をじっと見つめた。彼の視線は母に向けられたままで、なにを考えているのかまでは読めないが、肩に回された手は力強く、庇われているのだと実感する。

 ストレートな隼人さんの言葉に、母は一瞬目を見張ったがすぐに笑みを浮かべた。

「そうですか? 娘は気が利かないし、余計なことばかりをして進藤さんを煩わせないといいんですけれど……。そういえば、どうしてこちらに?」

「ちょっと荷物を取りに来たの」

 隼人さんに対する質問を遮るように、私は強く言い切った。続いて母の方を見ないまま彼に声をかける。

「ごめんなさい。すぐに取ってきますね」

「わざわざそんなことに付き合わせたの? 相変わらず気が利かないわね」

 母のため息交じりの反応を無視して、私は部屋の中へ急いだ。

「私が同行を申し出たんです。結果的にお母さまに会えてよかった」

 隼人さんがフォローしているのが聞こえる。早く戻らなければとパンプスを脱ぎ捨て、自室に突き進む。相変わらずあまり生活感のない家だ。

 高校を卒業して出ていったままの部屋は、ある意味とても懐かしい。クローゼットを開けて、目当ての紙袋をふたつ手に取り、慌てて戻る。
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