元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
 クラスの女どもが「あんこ」と呼んでいるのを聞いて、ニックネームなのかと思ったら違った。

『『わくいきょうこ』じゃないのか?」
「『わくいあんこ』だよ」
「……甘そうな名前だな」
「そうなの! 可愛くて気に入っているの。おばあちゃんが付けてくれたのよ」
 
 甘いのは苦手なんだが……。と思いながらも「……いい名前だな」と言ったら「鷹也って名前も格好良くていい名前だね!」と返されたことがある。

 杏子の明るくてポジティブなところが俺にはなくて、妙に惹きつけられた。
 女の名前を可愛いと思うなんて、初めての事だった。 
 
 女は鬱陶しいものと思っていた俺だったが、杏子だけは違った。近くにいても全く気にならない。むしろ傍にいるのがあまりにも自然で居心地が良かった。

 いつのまにか杏子には心を許していて、俺たちはごく自然に距離を縮めた。
 
 そして一学期の終業式の日、学校の近くの神社でたまたま夏祭りがあることを知ったのだ。

 「行ってみる? ……今日、夏祭り」それが精一杯の誘いだった。

 クラスメイトから、特別な関係への第一歩目。
< 24 / 228 >

この作品をシェア

pagetop