振り返って、接吻
「久しぶり、だね」
なんとかわたしの口から出てきた言葉が、これだった。そんな、語彙力の乏しすぎるわたしに、由鶴は何かを諦めたように生徒会室の扉に寄りかかった。
「もう、俺とは話もしたくない?」
「そんなこと、」
「あれから目も合わせてくれないし、嘘でも謝ったり慰めたりしてくれると思ったんだけど」
言葉数の多い由鶴は、2週間前よりも、なんだか大人びて見えた。少しだけ伸びた前髪が、さらさらと目にかかっていてミステリアス。
どの瞬間を切り取っても絵になるので、うっかり吸い込まれてしまいそうだ。深月由鶴と目を合わせたら正気でいられない、などと彼の美貌は謳われているけれど、わたしはちがう。
ようやく絡んだ視線に、じんわりと安堵した。
「ごめんなさい」
心の中で何度も繰り返した謝罪を、ようやく口に出して言えた。
言葉の凶器を知らない程に幼くない。そのくせ、未然に防御できるほど強くもないのが中学生だ。
わたしの謝罪を聞いて、皮肉っぽく笑った由鶴がぽつりと、零すように声を出した。
「喜んでくれると、思ったんだ」
その純真さが嫌だった。
ほんとうは、凄いね、一緒に勉強した甲斐あったねって温かい言葉をかけてあげたかった。由鶴がわたしをいつも褒めてくれるときみたいに、頭を撫でてあげたかった。
でも、悔しさが上回って、それだけのことがうまくできない。