振り返って、接吻
あの日から2週間程度、わたしたちは会話するどころか、視線を合わせることもなかった。
何を偉そうにって感じだけど、わたしのほうから目を逸らしてしまう。だって、怖い。わたしと視線が合うと安心したように目を細める由鶴は、もういないかもしれない。むしろ、彼のほうから逸らしてくるかもしれない。
そう思ったら、怖くて、由鶴のいる方向を見ることさえできなかった。
だけど、永遠に逃げまくることなんてできるはずもなく、ある放課後、わたしは生徒会室にいた。
「ちょっと話したいんだけど、いま、時間、平気?」
生徒会の仕事があると言ってわたしを誘き寄せた由鶴は、久々に見ても変わらずに美しかった。
わたしのスケジュールなんてほとんど把握している彼は、返事を待たずにがちゃんとわざと音を立てて後ろ手で鍵をかけた。その姿を立ち尽くしたまま呆然と見つめるわたしに、彼は酷薄な笑みを浮かべて言った。
「ごめんね、大嫌いな俺とふたりっきりにしちゃって」
ちがうよ、嫌いなんかじゃない。
かわいくて、大切な幼馴染だ。わたしが守ってあげたいし、わたしだけが甘やかしてあげたい。
だけどわたしは、このうるわしき幼馴染を、大っ嫌いに〝なりたかった〟。