振り返って、接吻
彼女は魔性だ。
求めていたのと違う、余白を残した答えなのに。
力強くて、自信があって、俺を何度も虜にする。
それと同時に、俺をそっと優しく突き放す。
「宇田ってやっぱり変だよ」
「奥さんって呼んでもいいよ?」
「ほんと、勘弁して」
周囲に親密度をアピールするためするりと腰に腕を回せば、宇田は満足そうに笑った。その表情を確認して、ようやく安堵の溜息が零れる。
「ほんと、美男美女だしお似合いすぎる」
「副社長ロスだけど、宇田社長なら仕方ないよねー」
「しかも幼馴染でしょ?うらやましい」
政略結婚にはメリットばかりだ。そう、だけど。
祝福やら何やらの声をかけてくれる招待客たちに囲まれて、その幸せらしき空気の中で、俺は妙に冷静になってしまった。
—————宇田は、俺のことなんか好きにならない。