妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「フェルーナ殿、妹君の振る舞いをどう思った?」
「え?」

 地下室から客室に戻る際、アグナヴァン様はそのような話を私に振ってきた。
 彼も、フェルーナの態度には違和感を覚えたようだ。私から話は聞いているので、それは当然のことなのかもしれない。

「恐らく、あれは演技でしょう」
「そう思うか?」
「ええ、一度それに騙されていますからね……」

 私の言葉に、アグナヴァン様は考えるような仕草を見せた。
 もしかしたら、彼はホーネリアが本当に反省していると思っているのかもしれない。
 しかし、そう考えるのは間違いだ。彼女は演技が上手いのである。

「闇の魔力は、使用者の精神と肉体を破壊すると聞く。その影響が、彼女にもあったのではないだろうか?」
「闇の魔力……でも、ホーネリアは闇の魔法を行使する前から、私に対して敵意をむき出しにしていましたよ?」
「あなたに使ったのが、初めてではないのかもしれない」
「何かのきっかけで、闇の魔法を使って、精神が破壊されて、敵意を向けるようになったということですか……」

 アグナヴァン様の推論は、あり得ない話ではなかった。
 闇の魔力は、恐ろしいものだ。その影響によって、人格が狂うこともあるかもしれない。
 ホーネリアが知らない内に闇の魔法を使って、人格が変化した。そういうことなのだろうか。
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