妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 アグナヴァン様は、私の予想に対して微妙な顔を浮かべていた。
 それは、当たり前のことである。本が動く。普通なら、そのような考えは思い浮かんでこないだろう。

「……状況的に、確かにあり得るのかもしれないな。王城に侵入者が入るのは難しい。だが、本が自ら動くなら問題はない」

 しばらく考えた後、アグナヴァン様はゆっくりとそう呟いた。
 この状況が、彼に私の普通ならばあり得ない考えを肯定させてくれたようだ。

「だが、それなら本はどこに行ったのだろうか?」
「目立つ場所にあるなら、誰かが発見するはずです。本が動いているなんて見たら、噂になるでしょう」
「つまり、どこかでじっとしているという訳か……」
「もしくは、ホーネリアの元に行っているかもしれません。彼女の精神をずっと汚染していた訳ですから、本にとっても彼女は心地いいものだったということでしょうし」
「なるほど……」

 とりあえず、私達は本の探索を再開することにした。
 本当に本が動いているかどうかはわからない。しかし、ここにない以上、他の場所を探すしかないだろう。
< 94 / 118 >

この作品をシェア

pagetop