弁護士は相談料として愛を請求する

 周囲は居酒屋だったのでざわざわして、笑い声や大声もしているので目立ってはいない。居酒屋の奥の個室ブースなので人目もないのが何よりだ。これは口を出さない方がいいのかもしれないと追い出されるのが嫌な私は黙った。

「さてと。まずは、勧告する。俺とすずは正式に交際することになった。よって、お前の告白は却下だ。潔く、すずから手を引け」

 のんは低い声で判決文を読むように、佐竹君に言い渡した。

「異議あり。どうせ、倉田をキープして遊び暮らすつもりだろ。所詮、お前は昔から倉田を自分の所有物のように考えていて、彼女だけで我慢できるとは思えない。お前の女との噂は結構知っている」

 一番聞きたくなかった言葉を耳にしている。帰れと言ったのはそういうことだったのね。顔をしかめて下を向いた私に気づいたんだろう、佐竹君が言った。

「……悪いな、倉田。ハッキリさせたいんだ。我慢してくれ」

「佐竹。俺は浮気など絶対しない。今の俺の噂はあの事務所のせいだ。噂なんて、掃いて捨てるほど事欠かない毎日になりつつある。お前が耳にしているのもその一部だ。ほぼ嘘だ」
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