神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「ふーん…?じゃ、その具体的な方法は?勿論考えてあるんだよね?」

と、ルディシアは意地悪く尋ねた。

そんなの、簡単に思いつくなら苦労しない…と言いたいところだったが。

「うん、それなんだけど…」

シルナもシルナなりに、色々と考えていたようだ。

「やっぱり一番良いのは、マシュリ君を苛む呪いを解くこと…」

根本的に、膿を出す傷口を治療してしまおうという案か。

確かに、それが一番良い解決策だと思う。

「でも、一番実現が難しい手段でもある。…だろ?」

「…そうなんだよ」

マシュリの呪いの根源…は、冥界に住むケルベロスの一味にある。

まさか冥界に押しかけていって、ケルベロスの皆さんを捕まえて。

マシュリの呪いを解け、と脅迫する訳にも行かず。

いや、それが実現可能な手段なら、俺達は厭わない。

神を敵に回してるくらいなのに、今更ケルベロスの群れにビビったりはしない。

しかし、そもそも人間は冥界に行くことは出来ない。

人間が冥界に足を踏み入れようものなら、煉獄の炎で灼かれ、一分一秒とて生きていられまい。

ケルベロスの偉い方に直談判…どころじゃない。

それに、そこまで危険を犯して、何とか冥界に潜り込めたとしても。

マシュリに呪いをかけたケルベロス達が、俺達の直談判くらいで、あっさり呪いを解いてくれるとは思えない。

そもそも、呪いってそんなに簡単に解けるものなのか?

謝って済むものなら、今頃とっくにマシュリは許されているはずだ。

それでも、今に至るまでマシュリの呪いが健在だということは…。

そう簡単に解いてはもらえない、あるいはそう簡単に解くことは出来ない呪いなんだろう。

非常に厄介。

根本的に治療することは出来ない。

なら、やはり対処療法によって、症状を一時的に誤魔化すしか方法がない。

その為に、俺は傷口にメスを入れて膿を出すという方法を提案した。

しかし、シルナは…。

「…これを使うのはどうかな?」

そう言って、シルナは「それ」を手に取って見せた。

シルナが提案したのは、例えるなら…。

傷口に絆創膏を貼ることで、症状を緩和しようというものだった。
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