神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
その日の放課後。

俺達は、準備の為に学院長室に集まっていた。

今日ばかりは遊んでもらえる雰囲気ではない、ということをいち早く察したのか。

賢いいろりは、今日は学院長室にやって来なかった。

あの猫は本当に偉い。

…それに比べて。

「…あれ?どうしたんですか皆さん。そんな険しい顔して」

「…ナジュ…お前」

遅れて学院長室にやって来たナジュは、こんな呑気な反応だった。

あのなぁ。説明しておいただろ?

「例の…ネクロマンサーの子だよ。あの子に会いに行くんだよ、これから」

と、天音が説明してやった。

そうだよ。

「あぁ、ネクロマンサー…」

イーニシュフェルト魔導学院に潜り込み、イーニシュフェルトの里の族長以下、様々な死体を操り。

生徒の身を脅かし、ついでに俺達の身も脅かした。

その張本人に、これから会いにいくのだ。

奴は…ルディシアは今、聖魔騎士団魔導部隊で身柄を拘束されている。

そして、そこでも連日シュニィ達による取り調べを受けているはずだ。

今日はその「事情聴取」に、俺達も参加させてもらう予定なのだ。

疑いたくはないが、ルディシアがシュニィ達に本当のことを喋っているという確信は持てないからな。

「尋問官」が代われば、また出てくる証言も違うかと思って。

それに俺達は、まだルディシアから大事なことを聞いていないからな。

ルディシアが何故、誰の指示を受け、何の為にイーニシュフェルト魔導学院に潜り込んだのか。

これを確かめないことには、枕を高くして眠れない。

そんな訳で、満を持して、今日ルディシアに会いにいくことになった。

…の、だが。

「それじゃあ早速、皆で行こう…と言いたいところだけど…」

と、シルナが口ごもった。

…皆で行ったら、学院の中に教師が一人もいなくなるな。

シルナの分身ならいるけど、さすがに一人くらいは生身の人間がいた方が良いんじゃないか。

「シルナは当然必要…で、俺はシルナから離れるつもりはないし…」
 
「じゃあ僕が残りますよ」

と、ナジュ。

いや、お前は駄目だろ。
 
「尋問なんだぞ。お前がいなくてどうするんだよ」

今こそ、その悪趣味な読心魔法を活かすべきだろうが。

心の中を覗いてまで尋問するのは、申し訳ないと思う。

が、俺達にはルディシアが本当のことを話しているのか、判別がつかないからな。 

学院の危機に繋がる可能性がある者を、野放しにはしておけない。

気は進まないが…徹底的に腹を探っておくべきだろう。

「えー。悪趣味とか言う人とは行かな、」

口を尖らせて不満を訴えるナジュに、イレースがすかさず。

「あなたが学院に残るつもりなら、丁度良いです。今日行った小テストの採点、全部あなたにやってもらいますから」

「よーし。今日は素晴らしい尋問日和ですね!僕も一肌脱ぎますよ」

イレース、ナイス。

素晴らしい尋問日和って何だよ。

「ナジュと…それに、今回はイレースもついてきてもらった方が良いだろうな」

「そうでしょうね。私もそのつもりです」

そうか、良かった。

今回は、シルナより俺より…何ならナジュよりも。

イレースが一番のキーパーソンになり得るかもしれないのだ。
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