神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
二対二の勝負。

令月とすぐりなら負けないだろうとか、キュレムとルイーシュなら負けないだろうとか、色々考えていたが。

まさかのご指名は、俺とシルナ。

…マジ?

一回戦も二回戦も、ナツキ様は明らかに不利な相手を指名してきた。

だから今度も、意地の悪い選出をするものだとばかり思っていた。

わざと、連携の取れなさそうな二人を選んで、共倒れを狙うものだと…。

しかし、そんなことはなかった。

だって、俺とシルナだぞ?

令月とすぐり、キュレムとルイーシュ…ほどじゃないかもしれないが。

俺にとっては、この場でもっとも連携の取れる相手。

互いに相棒と呼んで久しい相手だ。

何だろう。俄然、勝てる気がしてきた。

多分、シルナも同じ気持ちだろう。

「えーと…。本当に良いの?」

思わず、ナツキ様にそう尋ねる始末。

おい、余計なことは言うなって。

ナツキ様が心変わりして、「やっぱり組み合わせ変えます」とか言い出したら困るだろ。

「いつの間にこの人、こんなに物分かりが良くなったんだ…?」

何か裏があるんじゃないかと訝しんだ。

「十中八九、罠でしょ」

「…何か…策があるんだろうね。僕もそう思う…」

ルディシアは胡散臭そうな顔で、天音が心配そうな顔で、それぞれ言った。

お前達もそう思うか。

そうだったら嫌だなって思ってたんだけど。

「意外と素直な動機かもしれないぞ。二回戦で卑怯な勝ち方したから、三回戦こそ正々堂々、真正面から戦って完全勝利したい、とか…」

「あの人が、そんな殊勝なこと考えるとは思えないね」

ルディシア、ばっさりと一刀両断。

元部下に全然信用されてないナツキ様。ウケる。

「何か、あんたらを嵌める為の策があるんでしょ」

「そうか…。まぁ、そうだろうな…」

小賢しい「策士様」だもんな。

なんか考えてるんだろうな、多分…。また小狡いことしようとしてるんだ。

はてさて、今度は何をするつもりなのか…。

「意外と余裕な顔してるな。緊張してるんじゃなかったのか?」

ジュリスが、俺にそう聞いてきた。

あー、うん…。

これが一対一の試合で指名されたなら、今頃心臓が口から飛び出しそうになってたかもな。

でも、今回はシルナが一緒だから。

「不思議と負ける気しないんだよな…」

シルナと一緒なら、何とでも、どうとでも出来る気がする。

ハクロとコクロが何をしてこようと、ナツキ様が何を企もうと。

「全く羽久さんと来たら、学院長と組むと突然気が大きくなるんですから」

「お互いを信用してるからだよ。きっと大丈夫だよ」

「油断するんじゃないんですよ?パンダと一緒だからって。パンダは所詮パンダなんですから」

イーニシュフェルト魔導学院教師陣のナジュと天音、イレースがそれぞれ叱咤激励を飛ばしてくれた。

まぁパンダなんだけど、ただのパンダじゃなくて、付き合い長いパンダだから。

「…イレースちゃんも羽久も、私に失礼なこと考えてる気がする…」

シルナも、いつも通りぶつぶつ不満げに呟いてるし。

負ける気がしない。不思議。
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