再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─
セーラが赤ちゃんの声に呼ばれて目を開ける。ベッドで一緒に眠っていた赤ちゃんの金色の瞳が、セーラをじっと見つめていた。
セーラが見つめ返すと、
赤ちゃんの金色の瞳がみるみる細くなる。
窓から入る晴れ晴れした光の中で、
彼が初めて笑ってくれた。
「か、可愛い」
その笑顔があまりにも尊くて、セーラは赤ちゃんを抱き締めて、思わず涙がこぼれた。
「すっごい可愛い……!」
今まで生きてきて何にも特別な意味なんてなかった。
でもヘタクソながら逃げ出さないで、セーラが夜通し守った命が朝になり健全に笑っている。
セーラが掴んだ大勝利だ。
(この子を育てるために生きてきたのかも)
彼の笑顔を見て初めて、セーラがここにいる意味をもらった気がした。
のらりくらり生きてきて、初めて逃げずに向き合ったのが彼なのだ。
セーラはふわふわの赤ちゃんを抱き締めて、大事なことに気がついた。
「そうだ名前!すっかり忘れてたね」
ご機嫌な赤ちゃんの金色の瞳が、朝日に煌くのを見て決めた。
「今日から君はマオ。
魔王のマオじゃないよ?私の世界の言葉で
『雨が止んだ』っていう意味だよ」
セーラが赤ちゃんのふわふわで小さな頭を優しく撫でて額にキスをする。
「どうか、魔王として生まれたマオの上に降る雨が……いつだって止みますように」
セーラが祈るように言葉を紡ぐと、マオは金色の瞳を細めて、また笑った。