冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 ため息とともにスマホをまたカウンターに戻す。と同時に左京が帰宅した。

「ただいま」
「おかえりなさい。ごはん、ちょうど準備できたところです」
「あぁ。玄関を開けた瞬間からいい匂いだなと期待してた」

 新婚ごっこ、でしかないことはちゃんと理解している。自分たちは本当の夫婦ではないし、事件が解決すれば即さよならの関係だ。だけどここは、ずっと孤独だった自分が初めて得た〝温かい家庭〟そのものだった。

(束の間でもいい。もう少しだけ)

 上着を脱いで、シャツを腕まくりした彼が顔の前で両手を合わせる。

「いただきます」

 蛍も同じ台詞を口にして箸に手を伸ばす。

「なんだか、日に日にメニューが豪華になっていっていないか? 無理なとき俺のぶんはなしでいいからな」
「ひとりぶんもふたりぶんも手間は同じです。って、このやり取りも毎日していますよね。もうやめませんか?」

 クスクス笑う蛍に、左京は「いや、でも」と頑固な一面を見せる。

 料理については、蛍が強引に押しつけているようなもの。

(『ありがたい』と言ってくれてはいるけど、ただの社交辞令なのかな)

「やっぱり迷惑ですか?」
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