冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 今さらながら心配になり、蛍は顔を曇らせる。

「それは絶対にない。蛍の料理はどんな高級店よりうまいし、おかげで最近身体の調子がいい」

 左京がきっぱりと言ってくれて、ホッと胸を撫でおろす。

「よかった」

 テレビを賑わすニュースの話題、読んだ本の感想。何気ない会話が自然と続くようになっていて、この時間が蛍にはとても心地よい。

 ふと思いついたように左京が言う。

「気になっていることがあるんだが、聞いてもいいか?」
「はい」
「蛍はどうしてバレエをやめてしまったんだ?」
「あ、えっと」

 表情がこわばったことに気づいたのだろう、左京は慌てて言葉を重ねる。

「いや、すまない。話したくないことならいいんだ」
「いいえ、そんなことはないんです」

 当時は大きなショックを受けたけれど、もう傷は癒えている。

 むしろ、彼が自分を知ろうと思ってくれることを嬉しく思った。蛍は昔を思い出しながら語り出す。

「ちょっと自慢になっちゃうんですけど、私のバレエ結構いいところまでいってたんです」
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