冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 明日の朝までに終わらせなければならない仕事があったのに、すっかり忘れてまだ期日に余裕のある仕事に丸一日を費やしてしまった。

(どうしよう……って今からやる以外ないわよね)

 長時間残業を覚悟して、蛍はいつも迎えに来てくれる左京の手配した運転手に電話を入れる。今日はタクシーを捕まえるからと説得し帰ってもらった。

(かえってよかったのかも。左京さんと顔を合わせている時間を減らせるし)

 電話を終えてデスクに戻ると、山のように積まれた書類を前に腕まくりをする。

 隣の席の唯はもう帰り支度を済ませて席を立ったところだった。今日もかわいらしくセットされた髪をオシャレなバレッタで留めている。

「おつかれさまでした」

 蛍がそう声をかけると、彼女はちらりとこちらのデスクを一瞥する。

「それ、今から全部やるんですか?」
「うん」
「誰かに押しつけられたとか?」

 蛍は笑って首を横に振る。

「違うよ、私のミス。締切が明日の朝なのをすっかり忘れてて」

 そのとき、フロアに入ってきた別部署の女性が「おつかれさま~」と唯に声をかけた。

「もう出るところなら一緒に行こうよ」
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