冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 翌朝。よそよそしい態度の蛍を不審に思ったのだろう。

「蛍!」

 右の手首をつかまれて、蛍は軽く振り向く。厳しい顔つき左京がこちらをじっと見ている。

「やはり昨日の菅井家の集まりでなにかあったのか?」
「いいえ。皆さん親切にしてくださいましたし、お義母さまとお会いできたのも嬉しかったです」

 無理やり口角をあげて答える。

 嘘はついていない。彼らはただのコマでしかない蛍を丁重にもてなしてくれたし、貴子は本当に素敵な女性で話せて楽しかった。

「だが」
「ごめんなさい。今日はいつもより早く出勤しないといけなくて」

 まだなにか言いたそうにしている左京を避けるように蛍は家を出た。

 いつものように、蛍は同僚と雑談することもなく淡々とキーボードを叩いていた。ゆうべはあんまり眠れなくて頭がややぼんやりとするけれど、思っていたよりきちんと仕事をこなせている。

 それが大きな勘違いだったと気づいたのは、夕方六時の業務終了のベルが流れたあとだった。

(しまった。うっかりしてた)
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