冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 スタジオのキャスターたちも彼に好意的なコメントをしている。いつもは粗探しみたいなマネをして政治家を批判しているイメージなのに。そこもまた蛍にとっては腹立たしいポイントだ。

「愛妻家ねぇ」

(まぁ、たしかに。奥さまのことは大事にしてるのかもね)

 思わず毒づくが、蛍にはその権利があるだろう。

(あの女性と結婚するために、お母さんをあっさり捨てたんだもの)

 海堂治郎は蛍の父親だ。定期的にお金を送ってくるだけで、それ以外の付き合いはまったくないけれど。

 父と母がどういう関係だったのか、詳しいことは知らない。

『代議士の先生だもの。身よりのない私とは最初から釣り合わなかったの』

 母がちらりとそんなふうにこぼしていたことがあったから、父にとってはほんの遊びだったのかもしれない。けれど母は蛍を身ごもった。

 その頃、父には名門海堂の娘との縁談が持ちあがっていた。彼は迷わずそちらを選び海堂家に婿入り、母には『金はいくらでも援助する。だが認知はしてやれない』のひと言で話を終わらせたそうだ。

(お母さんは、なんで私を産んだんだろう)
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