冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 落ち着いた柔らかい声が耳に届く。如月晋也(しんや)は海堂治郎の私設秘書だ。

 治郎と蛍の連絡係を務めてくれていて、なにかあれば彼から連絡が入る。なにもなくても蛍を心配して時々は顔を見に来てくれたりもする。父の秘書というだけで最初は毛嫌いしていたが、彼は政界をこころざす人間とは思えぬほど野心のない穏やかな男性で、今では美理の次に心を許せる存在になっていた。

 いつもなら蛍の近況を聞いてくれたり他愛ない世間話をしたりするのだが、今日の彼はいつもと様子が違う。スマホの向こうの空気が緊迫しているのを蛍は感じ取った。

「なにかあったんですか?」

 答える晋也の声は、やはりいつになく硬い。

『えぇ。ちょっと……電話ではなくお会いしてお話できたらと思っています』

 早いほうがいいと彼に頼まれ、明日の仕事終わりに待ち合わせをすることにした。晋也は蛍の会社まで車をつけると言ってくれたが、それは固辞した。彼の高級車に乗り込むところなど会社の人に見られたくない。

『では、午後七時で。はい、よろしくお願いします』
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