冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす

　晋也は彼に、だいぶ蛍の内情を話しているようだ。

「あの人のお金にはできるだけ頼りたくないんです。頼ったら憎むこともできなくなるから……。くだらない意地なのはわかっていますけど」

　馬鹿だと思ったのだろうか。左京は少し目をみはった。それから、彼の唇がゆっくりと弧を描く。

「くだらないが……その意地の通し方、嫌いじゃないな。同じ意地っ張りとして共感できる」

　柔らかな笑みに目が吸い寄せられた。綺麗で、どこか寂しげな笑顔だった。

「それはどうも」
「俺は俺の意地をかけて君を守らなきゃならない。だから、あのマンションに帰るのは認められないな」

　沈黙が落ちる。蛍が唇を引き結んだままなのを見て、彼は攻め方を変えることにしたようだ。命令から説得へ。

「君の年は？」
「二十六歳です」
「では十分に大人だな。ここからは少し真面目な話をしようか」

　彼は組んでいた腕をほどき、自身の膝の上に置く。長い話になるのだろうか。蛍も小さく息を吐き、背もたれに身体を預けた。