冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
ふたりにとって、離婚は赤霧会事件の解決を意味するのでめでたいことだ。願掛けのような意味合いで離婚届を手元に置くのは悪くない案だと思ったのだが。
「取りに戻りますか?」
左京は首を左右に振る。
「今日のところはやめておこう。役所の人間に不審に思われるぞ」
そうだろうか。さっきの仕事ぶりを見るかぎりでは、彼らはそれも淡々と受け止めそうなものだが。とはいえ急ぐことではない。蛍はうなずく。
「そろそろランチの時間ですね。菅井さん、おなかは空いていないですか」
腕時計に目を落としながら聞いた。
「左京」
「え?」
顔をあげると、目の前で彼が苦笑いを浮かべていた。
「蛍も今日から〝菅井さん〟だろ。俺のことは名前で呼べ」
恋人どころか親しい男友達さえいない蛍は男性を名前で呼んだことなど一度もない。そんなに急に呼び名を変更できる気がしなかった。
「……ど、努力はしてみます」
「ははっ、それじゃダメな政治家の言い訳だ」
ニヤリと笑って、ふいに顔を寄せてきた。蛍の耳元でそっとささやく。
「結果を期待してる」
その声はやけに甘く響いて、蛍の心をざわつかせた。
「取りに戻りますか?」
左京は首を左右に振る。
「今日のところはやめておこう。役所の人間に不審に思われるぞ」
そうだろうか。さっきの仕事ぶりを見るかぎりでは、彼らはそれも淡々と受け止めそうなものだが。とはいえ急ぐことではない。蛍はうなずく。
「そろそろランチの時間ですね。菅井さん、おなかは空いていないですか」
腕時計に目を落としながら聞いた。
「左京」
「え?」
顔をあげると、目の前で彼が苦笑いを浮かべていた。
「蛍も今日から〝菅井さん〟だろ。俺のことは名前で呼べ」
恋人どころか親しい男友達さえいない蛍は男性を名前で呼んだことなど一度もない。そんなに急に呼び名を変更できる気がしなかった。
「……ど、努力はしてみます」
「ははっ、それじゃダメな政治家の言い訳だ」
ニヤリと笑って、ふいに顔を寄せてきた。蛍の耳元でそっとささやく。
「結果を期待してる」
その声はやけに甘く響いて、蛍の心をざわつかせた。