スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
 思春期真っ盛りの物言いにちょっとした懐かしさを覚える。でも、よく考えたら貴博さんのぶっきらぼうな態度とあまり変わらないかもしれない。
 そんな思考を巡らせている間にも、文乃さんは息子に自室で勉強しているように言い含め、彼はうんざりした顔で部屋を出ていった。
「……あの、お騒がせしました」
 ペコリと頭を下げる彼女が、急にごく普通の母親に見えた。
「いえいえ」
 そこでつい、緊張が緩んでしまったらしい。
 再びソファに腰掛け、文乃さんが用意した紅茶とケーキをサーブする姿を見ているうちに、私は思ったことをそのまま口にしていた。
「貴晴くんも大変ですね。急に伯父様のところに養子へ行くことになるなんて、思ってもみなかったでしょうし」
「深雪さん?」
 隣に座る奈央子の声にハッとすると同時に、文乃さんの驚きの表情が視界に入った。
「何でそんなこと……貴博から聞いたの?」
「いえ、そうではなくて」
 私はただ、聞こえよがしの自己紹介によって文乃さんのお兄さんの「失敗談」を思い出したのだ。
 跡取りにこだわる由緒正しき家柄と、直接迷惑を被った感のある「困った人だった」という文乃さんの発言から導き出されたのが、彼女の第二子、第三子に白羽の矢が立つ「血のつながった養子説」だった。
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