スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「深雪はそれでいいんだよ。演劇フリーク上等なんだろ? だから俺だってあんたの脚本に付き合ってみようと思ったんだ」
「ホントですか?」
 ガチャッ。
 と、楽屋の扉が開いて勇也さんが顔を出す。
「もうすぐオペ練始められそうだけど、そっちは?」
 驚いて無駄に身構えてしまってから、私は慌てて答えた。
「大丈夫です。もう終わります!」
「時間ないの分かってるよね? 奈央子じゃないんだからさ」
「はい!」
 バタン。
 と、こちらの返事も待たずに扉は閉まっていた。
 ……びっくりした。
「深雪?」
「あ、はい。できました。どうですか?」
 誤魔化すように鏡を指し示すと、貴博さんは自分の顔を覗き込む。
「……やっぱりあんまり変わらなくないか?」
 鏡の中のイケメンが小首を傾げている。
「たぶん元がいいからですよ」
 思えば私も、学生の頃はドーランとファンデーションの違いがよく分からなかった。隠したいものが増えるほど、舞台メイクのカバー力は効果を発揮する。
「どうしてメイクしたことが『もちろん』ない男が、そんなに肌きれいなんですか」
 思い切り嫌味を利かせたつもりだが、相変わらず貴博さんは動じない。
「そりゃ、深雪がビジュアルで選んだ男だからな」
「なるほど」
 考えてみれば、私がスカウトしたのは理想のイケメンだ。格好いいのがデフォルトなのだ。
< 46 / 204 >

この作品をシェア

pagetop