スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「そうですね。あの人の初めてがどんな感じだったかは分かりませんが、私と知り合った時点で既に女装も完璧にこなす役者でしたよ」
 勇也さんの場合、どうしても見た目はコントになってしまうけれど、芝居が入るとそれがまた妙にリアルになる。つまり「女性」の役ではなく「女装している男性」の役ならば、百点満点の仕上がりといえよう。
「女装って……張り合うのもバカみたいな話だな」
「あー、演劇はナンバーワンよりオンリーワンの世界だったりしますからね」
 私が貴博さんをスカウトしたのは、あくまで「ヒロのイメージにぴたりとハマった」からだ。そこには唯一無二の価値がある。
「だからってわけじゃないけど、貴博さんには本番を、演劇の真骨頂をとにかく楽しんでもらいたいです。この二ヶ月、あなたがヒロと真摯に向き合い、ヒロを模索し続けてくれたのは私も他の団員たちも分かっているので」
「そっか」
 メイクで更に美しく整えられた顔が、こちらを見つめる。
「じゃあ、顔だけ男の汚名は返上できたんだな」
「な!」
 真顔でそんなこと口にしないでほしい。
「初めから思ってません……ちょっとしか」
「思ってたんじゃないか」
「なら貴博さんだって、私のことヤバい女だと思ってましたよね?」
「思ってたというか、今も割と思っているけど」
 さらりとトゲのある言葉が返ってくる。やはり彼は性格の悪い、顔だけ男だ。
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