完全包囲 御曹司の秘めた恋心
美紗都とは大学で知り合った。入学当初から馬が合い自然と仲良くなった。CA希望も、食べることが好きだというところも、体を動かすことが好きなところも、似ているところが多すぎて思わず笑ってしまうくらいだ。
大学を卒業してからも同じ会社に就職し、今もこうやって一緒に仕事をしている。
私にとってかけがえのない唯一無二の親友だ。

そんな彼女に、初めて紹介したい人がいると言われた。これまでも三人ほど付き合っていた人がいたようだが、紹介したいと言われたことはなかった。
二人でいるところを数回見かけ、軽く挨拶を交わす程度。気がつくと、いつの間にか別れているといった状態だった。
けれど、どうやら今回は違うようだ。
もしかしたら、結婚するのかもしれない。

いい加減なことが嫌いな美紗都のことだ。
しっかり考えて結論を出したのだろう。
美紗都には幸せになってもらいたい。美紗都が笑顔でいてくれることが一番だ。

それにしても、私ときたら……

美紗都が言っていた通り、飲み会という名目の合コンで知り合ったメガバンク勤務の男性とは、二度ほど食事をした。相手の態度やなんかで、もしかしたらこのまま交際まで発展するのではないかと思っていたけれど、連絡がぷっつりと途絶えてしまった。私からの連絡もスルーだ。

それは彼だけではない。一年前も同じように連絡がぷっつりと途絶えてしまったことがある。
なので、私は未だ誰とも付き合ったことはない。リアルな男女の関係なんてものも体験したことはない。はっきり言わせてもらえば、処女だということだ。

美紗都は、私のことを素敵な女性だと言ってくれるが、私はそんな女性ではない。メガバンク勤務の彼も、その前の彼も、食事をした時点でその事に気づいてしまったのかもしれない。そして何も言わず、そっと離れていった。

やっぱり私は、オランウータンでしかないのよね……

思わず深い溜息が漏れた。
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