カバーアップ
「指環を探すよりも、君とのパフェを優先したんだ」

「……そんなにパフェが食べたかったんですか」

今度、彼がついたため息は、あきらかに先程までと質が違っていた。

「そうだね。
桜井とパフェが食べたかったんだ」

今、〝桜井と〟と強調されたように感じたが、気のせいだろうか。

「僕のここには満智がいるから、無理だって思ってる」

とんとん、と指先で課長が、自身の胸を叩く。

「なのに、僕が結婚指環をなくしたと知って、桜井は探そうって言ってくれるんだもんな……」

困ったように課長が笑う。
そういう顔をしてこれ以上、私を惑わすのはやめてほしい。

「あの。
さきほどから菅野課長は、なにが言いたいんでしょうか」

私とパフェが食べたかったとか、満智さんがいるから無理だとか。
私にはさっぱり理解ができない。

「……そう、だね。
僕の一方的な話を聞かされても、困るよね」

課長の視線が下を向く。
そのまま彼は黙々と残りのパフェを食べていた。
そのあいだにぐるぐると、課長がなにを言いたいのか考える。
すると唐突に、ひとつの考えにたどり着いた。
でも、これって……。

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