孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「そして彼らは――のちほど改めて紹介します。名前だけ自分で伝えてくれる?」
 王子が促すと六名はそれぞれ名乗った。同年代らしき人もいれば、中年の男性もいる。王子に賛同した者か臣下か。

「早速ですが、本題に入ります。僕たちは一時的に協力をする、リイラやアイノ嬢の処刑、魔人の殺害を回避するために。ですがもっと根本的なことまで踏み込みたいのです」

 王子は前のめりになり、アルト様をじっと見つめた。

「僕は、これを機にクーデターを起こすつもりです。ご協力いただけませんか」
「クーデター? しかし君は第一王子なのだろう。なぜそんなことをする必要がある」
「この国を変えたいからですよ。一気に」
「ふん。賛同できんな。争いが起こる」
「おや、平和主義ですか」

 エリアス様が口を挟んだ。にこやかなキラキラ王子と違って、眼鏡の宰相の息子は少し嫌味っぽい性格らしい。そういえばこんな人だった気もする、でもこの男もリイラに陥落してここに来ているのだと思うと少し可愛い。

「争いは好まない」
「しかしアルト様。どちらにせよこのままだと争いは避けらないのです」

 彼はこの国の問題と今後の国の計画を簡単に説明してくれた。
 この国は一部の貴族のためにあること、本来なら全ての民が手にしている魔力を許さずに貴族のみが力を持ち支配していること、貴族のために税収が増え苦しむ平民が増えていること、政敵を追放し魔力を制限していること、民の不満が噴出し始め近い未来にはクーデターも起きてしまう可能性があることを。
 国民の前で演説を行い、その場でリイラと私、アルト様を処刑したいと考えていること。それが失敗したとしても軍が魔の森に押し寄せてくること。軍は魔力を自覚させた平民の臨時魔法士中心だということ、彼らは魔人を滅ぼした後は処分されること。後ろにいる六名は軍基地で用済みと判断され処分されかけた人なのだと話した。
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