孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 アルト様はきっと最後まで私を案じるだろうから、代わりに答えた。

「大丈夫ですよ、アルト様が助けてくれますから」
「演説は三日後を予定しています。国はリイラを探しながら、リイラが見つからないことは極秘にしているはず。自分が代わりに行くと文だけ送っておいてくれないでしょうか」
「やっておくわ」

 王子の依頼になんでも有能なショコラが答えた。
 アルト様はまだ納得しきれていない顔をしているが、現状それ以外に方法はない。
 この演説を逃せば、国が軍を魔の森に派遣することは決定している。彼らが本当にこちらの味方になったのなら襲われる心配はひとまずないけれど裏切りに国はすぐに気付くだろう。安全な場所にいる国王を引きずり出す機会はなくなってしまう。

 ……ぐう。
 緊迫した場だというのに、リイラのお腹の音が響いた。リイラはチャーミングな表情「えへへ、ごめんなさい」と謝る。

「じゃあお昼ご飯にしましょうか! そんなことだろうと思ってサンドイッチ大量に作っておいたの」

 私が言うとリイラが「やったあ」と明るい声を出した。彼女の声に皆毒気が抜かれて自然と柔らかい表情になる。やっぱりリイラはヒロインだ、場を和ませる力がある。

 色々と考えないといけないことはあるけれど、腹が減っては戦はできぬだ。
 ひとまず彼らは魔人に敵意はないし、協力したいと思ってくれている。将来的に魔人も普通に暮らせる日々が来る、そんな夢を見てもいいのかもしれない。
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