凄腕外科医は初恋妻を溺愛で取り戻す~もう二度と君を離さない~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

「ご、ごめんなさ……」
「君が謝る必要はない」

 そう言いながら宏輝さんは私の手を握り、お母さんに頭を下げる。お母さんは微かに笑って立ち上がる。

「おうちにお邪魔するわね。今晩は祐希は見ておくから、ゆっくり休むのよ、茉由里」
「……うん」

 さすがに遠慮するわけにもいかずお願いする。お母さんは頷いたあと、宏輝さんを見た。

「宏輝さんも、休めるようなら休んで。今の今まで手術をしていたんでしょう? 半日以上かかったと聞いてます」
「松田先生。大丈夫です、慣れているので」

 綽々とした様子で言う宏輝さんを思わず見つめた。半日以上もの手術……! 一分どころか一秒すらも休む間なく、立ちっぱなしで全神経を集中させていたはずだ。
 お母さんがカラカラとドアをスライドさせ出て行ったあと、私は慌てて宏輝さんを見上げ口を開く。

「こ、宏輝さん。疲れているでしょう? 私は大丈夫らしいから、帰って休んで……」

 宏輝さんは眉を上げて首を横に振る。

「馬鹿なことを言うな。無理だ、帰宅しようが君のことが気にかかって眠れない」

 そうして、私の額にこつんと自分のものを重ね、掠れた声で言う。

「ここにいさせてくれ」
「……ん」

 返事をすると、宏輝さんは目を細めて私の頬にキスをする。そうして私の顔を覗き込み、頬を指の腹で撫でながら慈しむ目線で見つめてくる。

「宏輝さんは……」

 私はぽつり、と呟くように言う。

「どうして私なんかのことが好きなの?」
「君が茉由里だからだ。それ以外に理由はない。ただ」

 宏輝さんはそう言い切ってから、少しだけ何かを思い出すような目をして続ける。

「ただ……あえてきっかけと言うのならば。五歳だった俺がひとりで泣いているとき、茉由里、君に救われた」
「……え?」

 当然、記憶はない。私は目を瞬く。宏輝さんはフッと笑った。

「初めて君と会ったときだ。あのとき、俺は濡れ縁で泣いていた。母親が恋しくて仕方なかったんだ。そこに松田先生に連れられた君が来た。まだ数歩歩くと転けてしまうような、そんな歩き方の君は俺が泣いていると気がつくやいなや、君なりの全力で俺のところまでやってきて……小さな手で一生懸命に俺の頬を拭ってくれた。こんなふうに」

 宏輝さんは私の頬を柔らかく撫でる。

「『いいこ』って何度も言いながら……つい抱きしめてしまった俺に、君がキスした。君からキスしたんだ。頬にだけれど……」

 宏輝さんは私の頬にキスを落とし、微笑む。

「それから俺が自己紹介したら、名前を呼んでくれた。こー、って、舌足らずに……昨日のことのように覚えてる」
「……知りませんでした、そんなの」
「聞かれなかったからな」

 さらりと答えて、宏輝さんは私の髪をサラサラと撫で、そっと微笑む。

「なあ、茉由里。俺の名前を呼んで」
「……宏輝さん」
「もう一回」
「宏輝さん」

 呼んだ瞬間、かきいだかれる。後頭部と背中に手を回され、彼の固い体に押し付けられるように抱きしめられる。
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