魔獣鑑定士令嬢は飛竜騎士と空を舞う
「まあ、まあ……なんて素敵なんでしょうか……」

 邸宅内の案内を終えて、ティータイムを、と一室に案内をされるナターリエ。そこは、広い庭園に面しており、美しい花がガラス越しに見られる部屋だった。

「ヒース様をお呼びしてまいります。どうぞ、ごゆっくりお寛ぎくださいませ」
「ありがとう、ティート」

 ティートは一礼をすると部屋を出ていく。それと同時に「失礼いたします。遅くなりましたが、ご用意をいたします」と何人もの女中が室内に入ってテーブルセッティングをする。きっと、何時に邸宅を周り終わるかわからなかったため、先にセッティングをしなかったのだろうとナターリエは理解をして「はい」と微笑んだ。

 やがて、ほどなくヒースが入室すると、ちょうど用意がほぼ整って、女中たちは頭を下げて出ていく。

「待たせたかな。ナターリエ嬢」
「いいえ、こちらこそ、お待たせしておりましたら、申し訳ございません」
「いや。仕事をしていただけなので、特には」
「まあ。ご帰宅と同時にお仕事ですか。大変ですのね」
「少し長く空けていたため、それなりにはたまっていてなぁ」

 それはそうか、と思うナターリエ。ヒースが着席をすると、すぐに女中たちが2人に茶を運んで来た。テーブルには2人で食べるには明らかに量が多い菓子が並んでいる。

「ああ、実はいつもはこんなには並ばない。あなたが何を好きなのかわからなかったので、厨房の者も恐る恐るというところだな」

 そう言って笑うヒース。あっけらかんと内情を話すその姿勢を好ましく思うナターリエ。

「凄いです! わたし、甘いものは好きです!」
「そうか。それは、作り甲斐がありそうだ。俺はあまり甘いものを食べないのでな」
「あまりお好きではないのですか?」
「いや、それなりに好きだが、一口二口で良いぐらいで。肉はいくらでも食べるんだがなぁ」

 肉はいくらでも食べる。ヒースはなかなかにワイルドだ。
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