魔獣鑑定士令嬢は飛竜騎士と空を舞う
「まあ、まあ、まあ!」
竜を前にしてナターリエは興奮を抑えきれない。柵の中に入っているその竜は、小型とはいえ大きく、顔の位置が相当高い。気性が穏やかなのか、唸りもせずに静かに繋がれている。
「嬉しい……! 竜を見るのは初めてです……! 小型な種なだけで、立派な成竜ですよね?」
「はい」
「飛ばない種なのですねぇ」
「これは地竜ですからね。グローレン子爵様は飛竜の騎乗資格をお持ちではないので」
恐る恐る柵に近付いてじろじろと見るナターリエ。地竜はよほど穏やかなのか、まったく彼女を意に介していない。
「……あら……?」
上から下までじろじろと見ていると、ナターリエは何かに違和感を覚える。
(何か……何か、違う……? 確かに地竜に見えるけれど……)
首を傾げるナターリエ。
(本当はよろしくないけれど……)
きょろきょろと辺りを伺う。ビッケルは地竜の顔のあたりを撫でており、ナターリエを見ていない。
(ちょっと、ちょっと軽く……かるーーーーく……)
と言い訳をして、ナターリエは指をぴっと地竜に向け、鑑定スキルを発動した。彼女は未だ魔獣鑑定士にはなっていなかったものの、スキル発動はいつでも出来てしまうのだ。
彼女の鑑定スキルは、文字としてふわりと情報が浮かぶタイプのものだ。それは、彼女にしか見えない。
「!」
その結果、とんでもないことがわかって「えっ」と声を出す。その声がビッケルに聞こえていなかったかと窺えば、彼はまったく聞いていないようだった。
(どうしよう。これ……これは……知らせた方が良いのでは……)
しばらくナターリエはどうしようかとおたおたしていたが、ビッケルが「どうですか」とナターリエの側に回ってきたので、意を決した。
「ビッケル様。この竜……」
「はい?」
「火竜の血を引いているんですね?」
「えっ? そんなことは……」
火竜を飼う時には相応の環境が必要だ。気性が荒い個体であれば、火のブレスを無意識で吐く場合もあるため、竜舎は石などで作ることが必要だし、寒さには弱い。
(確かに、外見は地竜の特徴しか見えないから純血の地竜に見えるけれど……何かが違う……ううーーーーん、許されたいのだけど……)
魔獣鑑定には制限がないため、もう一度ナターリエは鑑定スキルを発動した。本来、まだ魔獣鑑定士の資格を得ていないため、これは越権行為だ。バレたらよろしくない。だが、ナターリエは「それ」をうまく説明が出来ないため、仕方がない、と内緒で鑑定を行った。
(火のブレスのスキルが間違いなく存在する。でも、潜在スキルだわ……)
どうしよう。どう説明したら良いだろうか。ナターリエは自分がまだ魔獣鑑定士の認定を受けていないため、鑑定結果が信頼されないことを知っている。それに、たとえどんなに能力があっても、だ。それに、認定試験が終わっていない状態では、スキル鑑定士であることを公にすることも出来ない。
(もし、潜在スキルが突然発動したら、この竜舎では燃えてしまうかもしれないし、周囲に木も多すぎる)
「ナターリエ様は、何をご覧になって、この竜が火竜だとおっしゃられるのですか?」
「えーっとそれは……えーっと……」
言い訳を考えずに口に出してしまったことは反省をしている。スキル鑑定士であることをバラして、怒られる覚悟を決めなければ……そう思った時、竜にとっても、ナターリエにとっても救世主が現れた。
「おお、これは立派な地竜だな。うん? 火竜の血も混ざっているのか」
「「えっ!?」」
驚いて2人が振り向くと、そこにはヒースの姿があった。
竜を前にしてナターリエは興奮を抑えきれない。柵の中に入っているその竜は、小型とはいえ大きく、顔の位置が相当高い。気性が穏やかなのか、唸りもせずに静かに繋がれている。
「嬉しい……! 竜を見るのは初めてです……! 小型な種なだけで、立派な成竜ですよね?」
「はい」
「飛ばない種なのですねぇ」
「これは地竜ですからね。グローレン子爵様は飛竜の騎乗資格をお持ちではないので」
恐る恐る柵に近付いてじろじろと見るナターリエ。地竜はよほど穏やかなのか、まったく彼女を意に介していない。
「……あら……?」
上から下までじろじろと見ていると、ナターリエは何かに違和感を覚える。
(何か……何か、違う……? 確かに地竜に見えるけれど……)
首を傾げるナターリエ。
(本当はよろしくないけれど……)
きょろきょろと辺りを伺う。ビッケルは地竜の顔のあたりを撫でており、ナターリエを見ていない。
(ちょっと、ちょっと軽く……かるーーーーく……)
と言い訳をして、ナターリエは指をぴっと地竜に向け、鑑定スキルを発動した。彼女は未だ魔獣鑑定士にはなっていなかったものの、スキル発動はいつでも出来てしまうのだ。
彼女の鑑定スキルは、文字としてふわりと情報が浮かぶタイプのものだ。それは、彼女にしか見えない。
「!」
その結果、とんでもないことがわかって「えっ」と声を出す。その声がビッケルに聞こえていなかったかと窺えば、彼はまったく聞いていないようだった。
(どうしよう。これ……これは……知らせた方が良いのでは……)
しばらくナターリエはどうしようかとおたおたしていたが、ビッケルが「どうですか」とナターリエの側に回ってきたので、意を決した。
「ビッケル様。この竜……」
「はい?」
「火竜の血を引いているんですね?」
「えっ? そんなことは……」
火竜を飼う時には相応の環境が必要だ。気性が荒い個体であれば、火のブレスを無意識で吐く場合もあるため、竜舎は石などで作ることが必要だし、寒さには弱い。
(確かに、外見は地竜の特徴しか見えないから純血の地竜に見えるけれど……何かが違う……ううーーーーん、許されたいのだけど……)
魔獣鑑定には制限がないため、もう一度ナターリエは鑑定スキルを発動した。本来、まだ魔獣鑑定士の資格を得ていないため、これは越権行為だ。バレたらよろしくない。だが、ナターリエは「それ」をうまく説明が出来ないため、仕方がない、と内緒で鑑定を行った。
(火のブレスのスキルが間違いなく存在する。でも、潜在スキルだわ……)
どうしよう。どう説明したら良いだろうか。ナターリエは自分がまだ魔獣鑑定士の認定を受けていないため、鑑定結果が信頼されないことを知っている。それに、たとえどんなに能力があっても、だ。それに、認定試験が終わっていない状態では、スキル鑑定士であることを公にすることも出来ない。
(もし、潜在スキルが突然発動したら、この竜舎では燃えてしまうかもしれないし、周囲に木も多すぎる)
「ナターリエ様は、何をご覧になって、この竜が火竜だとおっしゃられるのですか?」
「えーっとそれは……えーっと……」
言い訳を考えずに口に出してしまったことは反省をしている。スキル鑑定士であることをバラして、怒られる覚悟を決めなければ……そう思った時、竜にとっても、ナターリエにとっても救世主が現れた。
「おお、これは立派な地竜だな。うん? 火竜の血も混ざっているのか」
「「えっ!?」」
驚いて2人が振り向くと、そこにはヒースの姿があった。