その優しさでとどめを刺して
勝手に泣いた私を面倒くさいと思っただろうか。おかしなことを言うと呆れたのだろうか。
怖くて怖くて、目をぎゅっと閉じて初めて涙が引っ込んでいたことに気がついた。
「美嘉」
ふわりと嗅ぎ慣れた匂いが私を包む。
さっきまで下にあったはずのシロの声が上から聞こえてきたことに、温かい熱が背中まで回ったことに、あぁ抱きしめられてるのだと、一呼吸遅れて気がついた。
「好きだよ」
だから嫌いになるなんてあり得ない、と。
忍ぶような声が耳元から入り込み、甘い痺れが身体の隅々まで突き抜ける。
「……うそ」
ぼんやりとした頭で浮かんだ言葉がそのまま口をつく。
こんなときにまで素直に受け止められないのは、もうどうしようもない。
でもそんなぼろぼろのメッキだって時には役に立つのだと、私は身をもって感じることになった。