その優しさでとどめを刺して
「……シロも、行きなよ」
「行くって、どこに?」
「どこっていうか、みんなのとこに」
体調もだいぶ良くなってきたし。
呟いた声はちゃんと聞こえただろうか。
昔から乗れないのに乗りたがると、シロはみんなに言っていた。
それは決して嘘じゃない。
シロが慣れたように私の背中をさすってくれたのだって、アトラクションから降りてすぐに私の様子を見に来たのだって、小さい頃の癖みたいなものだ。
でもそれは本当に昔の話で。
家族ぐるみで遊園地に行ってたのなんて、それこそ小学生の低学年くらいまで。
それ以降はシロとどこかへ行くことはあれど、遊園地には行ったことがなかった。
それなのに今日こうやってあの頃みたいに気にかけてくれたことがすごく嬉しくて、そして少しだけ胸が苦しくて。
添えられた手は随分と大きくなっているのに、昔から何も成長しない自分が嫌になる。
このまま2人でいることなんて、今の私には耐えられそうになかった。