その優しさでとどめを刺して

「まだ万全じゃないだろ」
「……大丈夫だから」
「顔色も良くないし」
「……そのうち良くなる」
「なら良くなるまでいるよ」

これじゃあ埒があかない。

これ以上何か言ったところで、こうやってのらりくらりと躱されて、結局私の側に居てくれるのだろう。


───こういうところが、どうしようもなく好きなのだ。


「先生のとこに行くから」
「先生? ……あー、そういえばどこかに待機してるって言ってたな」
「うん、だから……、っ」

大丈夫とか、先行っててとか、多分懲りずにそんなことを言おうとしてたと思う。


でも次の瞬間、私の頭は真っ白になってしまって、時が止まったかのように体をこわばらせることしかできなかった。


だって背中にあったシロの熱が、するりと手を包み込むように移動してきたから。

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