その優しさでとどめを刺して

「……なんで」
「ん、なに?」

「夢の国、なのに」

ぽつりと目も合わさぬまま放った言葉に、シロが困惑しているのがわかる。


「美嘉?」
「せっかくの夢の国なのに」

じわりと込み上げてきそうになったものを、ぐっと目元に力を入れて耐える。


「……うん。でもまだ時間はあるから、今はゆっくりしよう、な?」

ぽんぽんと優しく撫でられる背中に、堪えきれなかった涙がひとつ落ちた。


……シロはバカだ。
こんな時まで私のことばかりで。


「せっかくの、修学旅行、なのに……っ」


高校生活の大切な思い出を、こんな具合の悪い私に付き合って消費するなんて。

そしてそれがどうしようもなく嬉しいだなんて。


私は最低な大バカ野郎だ。

< 7 / 20 >

この作品をシェア

pagetop