その優しさでとどめを刺して
「……なんで」
「ん、なに?」
「夢の国、なのに」
ぽつりと目も合わさぬまま放った言葉に、シロが困惑しているのがわかる。
「美嘉?」
「せっかくの夢の国なのに」
じわりと込み上げてきそうになったものを、ぐっと目元に力を入れて耐える。
「……うん。でもまだ時間はあるから、今はゆっくりしよう、な?」
ぽんぽんと優しく撫でられる背中に、堪えきれなかった涙がひとつ落ちた。
……シロはバカだ。
こんな時まで私のことばかりで。
「せっかくの、修学旅行、なのに……っ」
高校生活の大切な思い出を、こんな具合の悪い私に付き合って消費するなんて。
そしてそれがどうしようもなく嬉しいだなんて。
私は最低な大バカ野郎だ。