クズとブスの恋愛事情。
ここ数日の間に、色々と濃い出来事があり
ミキは晴れて宝来家の家族の一員となった訳だが、最初宝来家を訪れた時はカイラと共に腰を抜かしそうな程驚いた。
何がって、何から言えばいいのかもう色々だ。
宝来家の門を抜け、宝来家の敷地に入った瞬間に
“ここは人間の住む場所じゃない。神聖なる何か特別な者達しか踏み入れない聖なるパワースポットの様なそんな感覚に襲われた。”
と、直感的に感じてしまったくらいには。
そこで、自分達に与えられた超高級マンションの様な家にも驚くばかり。
与えられた部屋は、自分の要望によって色々と変えられるらしい。
まだ部屋もどんな部屋にしたいかも決まっていないミキは、数日前に兄弟になったばかりの兄であるライガの家に自分の部屋が決まるまで居候する事となった。
カイラはライガの強い要望により、ライガと同棲する事になった様だ。これから、少しずつカイラの要望を取り入れて部屋を改造していく予定らしい。
そこで、三人住む事になり
料理好きのライガとカイラは、共に台所に立ち楽しそうに調理している。その後ろ姿を見て、ミキは
…いいなぁ〜
こういうの
自分もいつかは、ひーちゃんと一緒にラブラブしながら台所立つ日がくるのかな?
そうなれれば、いいなぁ
と、物思いにふけながら二人の料理を待った。そして、料理が出来上がったら、盛り付けた皿などをライガやカイラと一緒にテーブルに運ぶのがミキの仕事。
食卓を囲みながら、たわいもない話から大事な話まで話す…なんて幸せなんだろうとミキは、数日経った今でも泣きそうになるくらい感動している。
いつも、夢にまで見た家族との食卓。リビングでくつろぐ時も、のんびりとなんでもない様で有意義な時間をまったりと過ごす。
なんて…夢みたいなんだと。
そんなミキに
「そういえばよ。リュウキ様が、ミキとカイラに行きたい学校そろそろ決めろって言ってたぞ。」
そう言ってきたライガに、ミキは自分の中でずっと考えていた話をライガ達に話してきた。
「…えっとさ。前にショウちゃんが、ひーちゃんに関する不吉な予言してたよね?」
と、ミキはちょっと都合悪そうにその話をしてきた。
「…ああ、“近いうちにアンジェラが陽毬にとんでもない酷い事をするって予言”な?」
「そう、それ。それで、ずっと考えてた事があったんだけど。ひーちゃんって、海外留学して向こうの学校行きながらモデル目指してる訳じゃん。
けど、ひーちゃんと一緒に頑張ってるフジちゃんとは学力の差があり過ぎて学校が別々になっちゃってるわけ。
まだ、フジちゃんが学校でも一緒に居るなら少し安心できるけど、頼りになるフジちゃんは居ない。
なら、ひーちゃんの通ってる学校にひーちゃんのボディーガードを兼ねて留学したいなって考えてる。」
そう言ったミキは、真剣そのもので
ミキの話を聞いたライガは
「いいと思うぜ?」
なんて、あっさりとミキの意見を認めたのだった。
あまりに呆気なく賛成してもらえた事に、ミキは拍子抜けだったがライガの次の言葉にかなり責任を感じる事となる。
「ただ、ショウ様の予言を聞いて
“その運命を変えたい”
と、思ってもな。聞いた全員が変えてあげたいって思ってもできない。直接予言を聞いた内の一人だけが、それを実行できる。
何故なら、直接予言を聞いて実行に関わった人数分だけ“その運命に関わる”事になる。つまり、それに関わった奴らの運命が何かかしら変わって世界に“ズレ”が生じてその小さな綻びから徐々に崩れていってな。
下手すりゃ、世界崩壊って事もあり得る恐ろしい事だ。
だから、慎重にならなきゃなんねー。
だから、ショウ様が悲しむ姿を見たくない桔梗でさえ、ショウ様の大親友の陽毬に関しての予言の件では手を貸さないって言ったんだ。
予言で大きく関わる人物がミキ、お前だからだ。
だから、お前は予言だという事を伏せて上手い事言いくるめてフジに、手を借りる事をお勧めするぜ?
…あ〜、ぶっちゃけな。フジは、
“花と美を司る花人界の住人で、そこの天の右腕だった”
程の実力者だ。
今は、ある事情で記憶を消されて人間の皮を被って生きてるがな。あいつが本気出しゃ、マジで強えー。」
なんて、とんでもない話を聞かされミキは、フジを思い浮かべて何となく浮世離れしてるとは思ってたけど、やっぱりとんでもない凄い人物だったんだなぁと妙に納得できた。
そこで、早速ミキはメールで
[フジちゃんに、お願いがあるんだけど。
最近、人伝で妙な噂聞いちゃったんだけどさ〜。
前にオレが紹介した、大親友のアンジェラっていたじゃん。
色々あってオレとアンジェラは縁切っちゃったんだけど。それが原因か分からないけど、理由は本当に不明。
だけど、何故かひーちゃんに逆恨みしてるっぽくてさ。
いつか分からないけど、ひーちゃんにかなり酷い事する計画があるらしいって誰かが話してるの聞いちゃってさ。
その話をしてた相手も分からない状態。
それもあって、ひーちゃんのボディーガードの為に、急遽ひーちゃんと同じ学校に転入する事になっちゃったから、よろしくー。]
と、メールを送ったら、即メールが返ってきて
[それって、確実にミキ君が原因だと思うわ。
だって、好きな人に好きな相手を紹介されたら、相手に嫉妬してしまうのは当たり前よ。]
なんて、よく分からない返信が返ってきてミキは首を傾げた。
[え?それって、アンジェラがオレの事好きみたいに聞こえるんだけど?
オレ達、そんな絶対有り得ないから。お互いに、恋愛感情持てないって何回も話してたし。
オレとアンジェラは、最低な話だけどお互いに都合の良い相手だったんだよねー。性欲処理もできるし、何でも話し合えるノリのいい親友みたいな?]
[…絶句だわ。だけど、私から見たらミキ君はどうか分からないけど、アンジェラさんは確実にミキ君の事を恋愛対象、異性として意識して見てるのが丸わかりだったわよ?
多分だけど同性愛とか別として。ノーマルの異性同士の友情って無いと思うわ。
きっと、片方がそう思っていても、もう片方が異性として意識してると思う。もしくは、お互いに意思してるけど気が付かないフリしてるとか。]
なんて、言われてミキは大きな雷に打たれた様な衝撃を喰らった。
…え!?
…アンジェラがオレの事…好き…???
いやいや!それは絶対に有り得ないっしょ!
あのアンジェラだよ?
ないないない!
と、どう考えてもアンジェラと恋愛が結びつかないミキは
[男女の友情は絶対あるしー。
アンジェラはちゃんと彼ピも居るし、セフレも居るのにオレを好き?ないない、絶対にないから。]
男女の友情は絶対あるという事と、アンジェラは自分の事を恋愛対象として見てない事を強く主張した。
[…ミキ君が、そう思いたいなら勝手にそう思ってればいいわ。こんな事、言い合ったって多分平行線のままだと思うから。
恋愛云々抜きにして。アンジェラさんは陽毬ちゃんに対して、敵対視して嫌味や見下す態度、それにかなり威圧的だったのは認識してる?
それで、陽毬ちゃんが萎縮しちゃって怖い思いをしてたのは知ってる?」
と、言うフジの問いかけに
何も覚えてないミキは
[アンジェラは、そんな事する様な奴じゃないよ。それに、ひーちゃんのそれはただの人見知りでしょ。]
軽く答えた。
[…今の回答で分かったわ。アンジェラさんは、確実にとても卑劣で残忍な方法で陽毬ちゃんに何かかしらするのは確定とみていいわ。
これは、陽毬ちゃんの未来にも関わる重大な事件になる可能性がとても高い。味方は多い方がいいけど、今回の件はミキ君には期待できない。
だから、私の方で何とかするわ。ミキ君は、ミキ君が思った様に勝手にやってればいいわ。]
それっきり、何度メールを送っても電話してみてもフジはミキに何の連絡をしてくる事もなかった。
…え?
なに?これって、オレが悪いって言いたいわけ?
意味分かんないんだけどさ!
フジちゃんも動くみたいだし、オレはオレで動くしかないか
なんて、ミキは軽く考えていた。
急ぎの事でもあったので食事が終わっても、リビングでフジとのメールのやり取りをしていたミキを心配そうに見ているカイラと苦笑いしているライガがいた。
そして、少し長めの時間を掛けミキのメールが終わった事が分かったライガは
「…あんま、何とかなる件じゃねーと思うぜ?」
なんて、ミキの心を見透かしたような口ぶりで苦笑いしながら声を掛けてきた。
…ドキッ!
「…なんか、心の中読まれてるみたいで変な感じ。」
なんて、軽い口調でヘラヘラしているミキ。
「まあ、俺は過去世全ての記憶持ってるからな。長く生きてるって言っても過言じゃねーと思うぜ?その分、様々な人生経験も豊富って言えるかもな。
なにせ、過去の罪で処罰を与えられて5回母体の中か、生まれてから直ぐに虐待って拷問を受けたり様々な方法で処刑されてきたんだからな。
その母体の中からも、耳や目が無くても外の様も見る事ができるし聞こえるし母親の感情もダイレクトに伝わる。前世の記憶や心、意思を持ったままの俺は、頭や心は大人なんだよな。
だから、この親達に何が起きてるのか母親は何を考えてるのか分かっちまう。それが、二か月だったり、五か月だったり赤ん坊として生まれて数ヶ月だったり。
その間に、様々な人間模様を見てある意味体験までしてんだ。マジで、色々あったぜ?
世の中は残酷でできてるって、こういう事かとも感じたし男女間のいざこざはマジでやべー。」
と、聞いて、ミキとカイラは、これはライガの前世の体験談も入ってるなと察した。ライガは隠してるつもりらしいが分かりやすい。
「そんな俺が見てきた中で、男女間の友情なんて一回も見た事がねー。
幼馴染だの、男女の垣根を超えた友情だとか性別関係なくだとか、よく耳にしてたし自分もそうだった時期もあったが異性同士何にもねー訳ねーんだわ。
あるとしたら、相手が不細工だったり貧乏、低スペックだった場合には、恋愛感情無しの友情ってのはあり得るかも知んねーけどな。
片方がイケメンもしくは美女だった場合は、イケメンや美女は低スペックな異性の親友に恋愛感情なんて絶対あり得なくても、低スペックの方がイケメンもしくは美女の親友を異性として見てる可能性はバカ高いぜ?
それが、お互いがイケメンだったり美女だった、ハイスペックだったり、何かに特化して注目の的な奴だったりな?
それだと、話はまた全然変わってくる。
そういう時って、必ずって言っていいほどお互い異性として意思してる。だから、親友で恋愛感情ないとか言いつつエッチする奴らが多い…てか、そういう奴らってみんなシてんじゃねーの?って、俺は思っちまう。
確かに恋愛感情無くてもエッチはできるけど、エッチする相手も選ぶだろ?つまり、そういう事だと思うぜ?
そもそも、親友とか友達って言っておいてエッチしてるあたり完全にアウトなんだけどな。
それは、置いといて。
そこで、ほぼ必ず出てくるお決まりが、片方は深い悩みからノリが合って一緒に馬鹿騒ぎできるエッチもできる都合のいいヤツ。
もう片方は、実は親友に恋してて親友に嫌われたり今まで通りの関係が壊れる事を恐れて、親友という恋するヤツに合わせてるだけ。
だけど、やっぱり自分を異性として意思してほしいが為に、親友に嫉妬してほしくてワザと恋人作ったり別のセフレ作ったりしてアピールする。
しかも、親友に好きな人ができた或いは親友を好きな奴を知ったりすると、ワザと相手に
“自分達は親友でお互い恋愛感情ないから。だけど、コイツとは腐れ縁で付き合い長いから聞きたい事あったら、いくらでも聞いてよ!”
ってな?相手を威嚇して牽制する奴も多いな。
中には、マジもんの男女の垣根を超えた友情で結ばれた親友っているかもしんねーけど極々稀だと思うし、
それこそ本物の親友なら、当たり前だが体の関係なんてないし相手の恋愛の邪魔なんてしねー。むしろ、応援するだろ。
それにお互いが異性ってのもあるから、お互いやお互いに大切な人の為に過度な接触はしねーだろうよ。
周りから見ても、そういう奴らは本当に親友で異性として意識してねーって分かるもんだ。
これが、俺の人生経験で経験したり見たり聞いた男女の垣根を超えた友情の話の感想だ。以上。」
と、自分の経験談を語り、ミキにアンジェラの気持ちがどれに当てはまってるかライガとカイラによっては一目瞭然であったが
ここまで言っても、ミキは首を傾げあくまでも自分達はエッチしてた仲だけど恋愛感情なんてないと一貫していた。
その様子に、ライガは
…あ〜、ミキは何を言っても、それを想定、想像、推測したり、相手の気持ちを考えたりする柔軟な頭を持ってないって事な
自分が直接体験して初めて身を持って分かるタイプか
……それじゃ、今回の件はミキにはかなり厳しいかもな?
フジが動いてくれるからそこは安心か
…いや、だが待てよ?
ショウ様が、自分が言えるギリギリまで必死になって陽毬の事を伝えようとしたって事は、マジでヤベー事が起こるのは確かだ
それに、ショウ様が最後の最後までかなり強い眠気と戦いながら踏ん張って伝えてきたワード
“赤ちゃん”
…嫌な予感しかねーし。“そういう事”だって想像しちまう
それは、かなりヤベー話だろ
陽毬の今後の人生に関わってくるような、そんな話だって事だろ?
…ミキはこんな調子だし、大丈夫か?
…はあ…
だから、フジはミキに憤慨してフジが周りにも強力してもらいながら単独で動くって話になったのな
納得だ
と、頭を抱えてしまった。
ライガもフジも、何をそんなに慎重かつ深刻になってるのか不思議でならないミキ。
別に陽毬に意地悪する相手がアンジェラだって分かってるんだから、ミキは陽毬と同じ学校に編入するんだし登下校や休み時間など一緒に居れば何かあっても陽毬を守ればいい。アンジェラに注意すればいいだけの話だ。
アンジェラなら、ミキの話を直ぐに分かってくれてそこで一件落着でしょ?チョロい、チョロい!
なんて、ミキは余裕しゃくしゃくである。
そんなミキに頭を抱えながらも
「…そろそろ、ショウ様の看病行ってくる。」
ライガは過度な看病で過労でぶっ倒れそうな桔梗を補助しに、パパ、ママ軍団で交代制で
ショウの看病と共に、自分一人で十分だと聞かない桔梗を無理矢理にフォローしに行くのだ。
今回はだいぶショウの症状が和らいだという事で、ショウや桔梗に助けてもらったお礼がしたいのと同時に予言の言葉を発した事で、ショウにどのような負荷が掛かるのか
これから宝来家でお世話になる身な事と、何かお手伝い出来ればという気持ちが大きく
カイラは実際にショウの症状や周りの人達がどの様に動いているのか見て、知っておきたいと考えていた。
ミキは予言してもらって陽毬が傷付く事を事前に防げそうなので、そのお礼と予言で体調崩してしまったショウのお見舞いに行こうと軽く考えていた。
だが、ライガに着いていく形で宝来本家を訪問した時から、二人にとって衝撃的な光景が広がっていた。
中に入ると、家中がどんより静まり返っていてメイドや使用人達も、なんとも言えない表情をしながら自分達の仕事をしている。時折
「…ショウ様…今回、長引いてるね。何とかしてあげたいけど…」
「……どうして、予言の言葉言っちゃうかなー!?
いくら、相手が可哀想でもさ。所詮、他人なんだしソイツの本来の運命なんだから、ほっとけばいいのにさ!
そのせいで、自分が苦しい思いするだけなのに!うちのショウ様は、ほんっとうにバカ過ぎる!」
「…ショウ様のあんな姿…やだぁ〜!いつもみたいに元気に笑ってくれなきゃヤダー!」
なんて、会話もポツリポツリと聞こえてくる。
そしてショウと桔梗の部屋に先にライガが入り、今まで看病していたママとバトンタッチする会話とショウのお見舞いにくるって言ってた二人がいるという話もしていた。
それから、直ぐにライガとママらしき人物が出てきて
ライガに劣らずの美女が憔悴しきった顔をして、美しい顔も台無しに泣き腫らした顔で何度も後ろを振り返り名残り惜しそうにしていた。
そんな彼女にライガは、一言二言声を掛けるとママらしき美女は小さくうなづきミキやカイラを見る事もなく、何度かショウ達の部屋を気にしながらフラフラと力無く家を出て行った。
その異様な雰囲気に、カイラとさすがのミキもなんとも言えない気持ちになり不安気にライガを見た。
すると、ライガは苦笑いしつつも部屋の中に入るよう二人を促した。
部屋の中を見たミキとカイラは驚いた!
何を驚くって、部屋中に見た事も聞いた事もない魔法陣が無数にあったから。部屋の中に入ると、神聖なる空気とヒーリング効果など様々な魔道の効果でミキもカイラも元気いっぱいになって今までにないくらいに体に羽でも生えたようにとても軽くなった。
そして、見た事もないくらいに大きく高価そうなベットの真ん中には、顔を真っ赤にしながら滝のような汗をかき呼吸も苦しいのか少し涙を流しながら眠っているショウの姿があった。
そのすぐ側で、ショウの汗を優しく拭き取りヒーリングを施しながらショウの看病をしている桔梗の姿。
雷我はすかさず、ショウの側に行きショウの手を握ると自分の額に当て
「ショウ、ライガパパが来たぞ。大丈夫、大丈夫だ。すぐ良くなるからな。大丈夫。」
と、ライガはショウの眠りの妨げにならないように元気付ける言葉を囁いている。そして、悲痛な面持ちで祈るようにショウを見ている。
それから、桔梗の様子も気にかけている。
ミキもカイラも、まさかショウがこんな状態になっているとは思ってもなかったので言葉を失い、ただただその光景を見ていた。
そんな様子の二人に、ライガは椅子に座るよう促しメイドに二人に飲み物と茶菓子を出してくれたが、二人はとてもそれを口に含む事なんてできなかった。
それを見て、ライガは
「今回は“まだ、マシな方”だ。ヒデー時は……可哀想過ぎて言葉にもしたくねーな。
とりあえず、これがショウが予言の言葉を発した“代償”だ。だいぶ、楽になったみたいだからカイラとミキを連れて来た。
これから、宝来家で暮らす事になる二人に知ってほしかったって事と、ショウが予言を言いそうになった時には出来るだけ止めるようお願いしたい事もあってな。」
そう話すライガは次に、桔梗を見ると
何回かショウの看病で、何回か桔梗が過労で倒れた事があるので桔梗からも目を離せない。
ショウは、予知を口に出すとその内容の重大さと大事な部分を喋る回数によって重さは違うが、
本人の例えによれば、インフルエンザにかかって高熱を出している感覚に似てるそうだ。
滅多にない事ではあるが、ショウが予知を口に出して体調を崩す度に苦しんでる我が子が可哀想で心配で…代われるものなら代わってやりたいと心苦しくなる。
そして、早く治ってくれる事を祈るしかできない自分がもどかしくて情けなく悔しい。
それは桔梗を含めショウの両親やパパ、ママ達みんな同じような気持ちだろうが。
…だって、こうなったらショウには何の薬も魔道も何も効果がなく、ひたすらショウの自然治癒に任せるしかできないから。
それを知っていても、思いつく限り荒れ狂ったように様々な治癒魔道や聖なる力、光魔道などなど、
桔梗ででしかできないだろう化け物じみた魔道を駆使して桔梗は
無駄だと分かりつつも奇跡を信じて、自分がやれるだけの事をライガ達がいくら止めようとそれを振り払ってショウの為に全力で向き合い続ける。
その他にも、動けないショウの排泄や入浴、着替え、栄養を考えたお粥を与えるなどなど介護までこなす。
それも、いつどんな変化があるか分からないという理由で寝ずに看病と治癒魔道を使い続ける。
いくら、化け物な桔梗でも倒れない訳がないのだ。
桔梗の気持ちが痛いほど分かるパパ、ママ達は、そんな桔梗を強く止める事などできない。
だから、桔梗には自分達ができる限りのサポートをし、ショウの手を握り
“大丈夫だよ、パパ、ママ、オブシディアン。
それに、桔梗もついてるからな。”
と、安心させる言葉を囁く。それくらいしかできないが、少しでもショウの側にいて安心させてあげたい。早く、治ってほしいと近くで祈りたいそんな気持ちでショウの側に居続ける。
そんな話を二人にした。
ライガの話を聞いて二人は神妙な面持ちになりつつ、ミキは
確かにショウちゃんは、具合悪くて大変かもだけどさ
たったこれくらいでみんなで大騒ぎして過保護過ぎない?
なんて、大袈裟過ぎると呆れてもいた。
その時だった。
さっきまで眠っていた筈のショウの目が開き、ミキをジッと見てきた。
…なんだろ…?
なんだか、凄く不気味なんだけど…
ショウに何かを見られてる感覚がして気味悪く感じ居心地が悪く感じるミキに
「……ど、どうして…?“何も変わってない”!!…このままじゃ、陽毬ちゃんが…っ!…ひま…んっ!!?」
酷くショックを受け泣きそうになっていた。加えて、何か意味深な発言をして、それ以上の何かを口にしようとした時
憔悴しきった様子の桔梗は青ざめ、慌てたようにショウが何か言い出す前に深くキスをしてそれ以上喋る事を許さなかった。
「…ショウ様!頼むから、それ以上言うな!!大丈夫だから。パパ達がなんとかするから!」
ライガも焦ったように、ショウに声を掛け何度もショウの手を握った手を自分の額にコツン、コツンと当てて何か祈ってるような必死さを感じる。
そして、すぐにライガはミキを見て
「ミキ!今すぐ、この部屋から出て家に帰れ!!」
そう叫んだ。ミキは、意味が分からなくて少し狼狽えたていたら
「聞こえなかったかっ!!今すぐ、ここから去れって言ってんだっ!!!」
ライガに鬼の形相で叫ばれ、酷く驚いたミキとカイラだったが言われた通りミキとカイラは素早くショウ達の部屋から出て行き自分達の家へと帰ったのだった。
…なんだったの?
なんだか、めちゃくちゃ怖かったんだけど〜
なんて、せっかくショウのお見舞いに来てあげたのに、意味不明に怒鳴られた挙げ句追い出され顔には出さないが気分を害してるミキだ。
そんなミキの気持ちを何となく読んでいたカイラは
「…さっき、ショウちゃんはミキ君を見て
“何も変わってない”
って、言ってた。つまり、自分を犠牲にしてまでショウちゃんが守りたいお友達の陽毬ちゃんの
“アンジェラさんによって、何か恐ろしい事をされる運命が何一つ変わってなかった”
そう、予測する事ができる。」
自分が考えた推測をミキに話した。
それを聞いて、解決策は万全なのにどうして?と、首を傾げている。
やっぱり、どうしてもお互いの傷の舐め合いをして付き合いの長いアンジェラが、人に酷い事をするなんて考えられなかった。
それに、酷いって言っても陽毬本人の前で悪口を言って傷付ける程度だとミキは考えているので、みんな大袈裟過ぎるとアンジェラをどんな悪者にしたいんだよとアンジェラを擁護する気持ちしかなかった。
そんな、ミキの前に
「……テメー、どーやってくたばりてー?魂ごと消し去ってやる!!」
大魔王…もとい桔梗が、今にも人を殺しそうな凶々しいオーラを纏い、いきなり現れたのだ。
何もない所に、音もなく現れた桔梗に心臓が飛び出るかというほど驚きすぎてミキとカイラはめちゃくちゃ大きな声で絶叫した。
ひとしきり叫んで落ち着いても、しばらくの間心臓がバクバクしていた。
…心臓に悪いから、いきなり現れるのはやめてほしいと思うミキとカイラだった。
ミキは晴れて宝来家の家族の一員となった訳だが、最初宝来家を訪れた時はカイラと共に腰を抜かしそうな程驚いた。
何がって、何から言えばいいのかもう色々だ。
宝来家の門を抜け、宝来家の敷地に入った瞬間に
“ここは人間の住む場所じゃない。神聖なる何か特別な者達しか踏み入れない聖なるパワースポットの様なそんな感覚に襲われた。”
と、直感的に感じてしまったくらいには。
そこで、自分達に与えられた超高級マンションの様な家にも驚くばかり。
与えられた部屋は、自分の要望によって色々と変えられるらしい。
まだ部屋もどんな部屋にしたいかも決まっていないミキは、数日前に兄弟になったばかりの兄であるライガの家に自分の部屋が決まるまで居候する事となった。
カイラはライガの強い要望により、ライガと同棲する事になった様だ。これから、少しずつカイラの要望を取り入れて部屋を改造していく予定らしい。
そこで、三人住む事になり
料理好きのライガとカイラは、共に台所に立ち楽しそうに調理している。その後ろ姿を見て、ミキは
…いいなぁ〜
こういうの
自分もいつかは、ひーちゃんと一緒にラブラブしながら台所立つ日がくるのかな?
そうなれれば、いいなぁ
と、物思いにふけながら二人の料理を待った。そして、料理が出来上がったら、盛り付けた皿などをライガやカイラと一緒にテーブルに運ぶのがミキの仕事。
食卓を囲みながら、たわいもない話から大事な話まで話す…なんて幸せなんだろうとミキは、数日経った今でも泣きそうになるくらい感動している。
いつも、夢にまで見た家族との食卓。リビングでくつろぐ時も、のんびりとなんでもない様で有意義な時間をまったりと過ごす。
なんて…夢みたいなんだと。
そんなミキに
「そういえばよ。リュウキ様が、ミキとカイラに行きたい学校そろそろ決めろって言ってたぞ。」
そう言ってきたライガに、ミキは自分の中でずっと考えていた話をライガ達に話してきた。
「…えっとさ。前にショウちゃんが、ひーちゃんに関する不吉な予言してたよね?」
と、ミキはちょっと都合悪そうにその話をしてきた。
「…ああ、“近いうちにアンジェラが陽毬にとんでもない酷い事をするって予言”な?」
「そう、それ。それで、ずっと考えてた事があったんだけど。ひーちゃんって、海外留学して向こうの学校行きながらモデル目指してる訳じゃん。
けど、ひーちゃんと一緒に頑張ってるフジちゃんとは学力の差があり過ぎて学校が別々になっちゃってるわけ。
まだ、フジちゃんが学校でも一緒に居るなら少し安心できるけど、頼りになるフジちゃんは居ない。
なら、ひーちゃんの通ってる学校にひーちゃんのボディーガードを兼ねて留学したいなって考えてる。」
そう言ったミキは、真剣そのもので
ミキの話を聞いたライガは
「いいと思うぜ?」
なんて、あっさりとミキの意見を認めたのだった。
あまりに呆気なく賛成してもらえた事に、ミキは拍子抜けだったがライガの次の言葉にかなり責任を感じる事となる。
「ただ、ショウ様の予言を聞いて
“その運命を変えたい”
と、思ってもな。聞いた全員が変えてあげたいって思ってもできない。直接予言を聞いた内の一人だけが、それを実行できる。
何故なら、直接予言を聞いて実行に関わった人数分だけ“その運命に関わる”事になる。つまり、それに関わった奴らの運命が何かかしら変わって世界に“ズレ”が生じてその小さな綻びから徐々に崩れていってな。
下手すりゃ、世界崩壊って事もあり得る恐ろしい事だ。
だから、慎重にならなきゃなんねー。
だから、ショウ様が悲しむ姿を見たくない桔梗でさえ、ショウ様の大親友の陽毬に関しての予言の件では手を貸さないって言ったんだ。
予言で大きく関わる人物がミキ、お前だからだ。
だから、お前は予言だという事を伏せて上手い事言いくるめてフジに、手を借りる事をお勧めするぜ?
…あ〜、ぶっちゃけな。フジは、
“花と美を司る花人界の住人で、そこの天の右腕だった”
程の実力者だ。
今は、ある事情で記憶を消されて人間の皮を被って生きてるがな。あいつが本気出しゃ、マジで強えー。」
なんて、とんでもない話を聞かされミキは、フジを思い浮かべて何となく浮世離れしてるとは思ってたけど、やっぱりとんでもない凄い人物だったんだなぁと妙に納得できた。
そこで、早速ミキはメールで
[フジちゃんに、お願いがあるんだけど。
最近、人伝で妙な噂聞いちゃったんだけどさ〜。
前にオレが紹介した、大親友のアンジェラっていたじゃん。
色々あってオレとアンジェラは縁切っちゃったんだけど。それが原因か分からないけど、理由は本当に不明。
だけど、何故かひーちゃんに逆恨みしてるっぽくてさ。
いつか分からないけど、ひーちゃんにかなり酷い事する計画があるらしいって誰かが話してるの聞いちゃってさ。
その話をしてた相手も分からない状態。
それもあって、ひーちゃんのボディーガードの為に、急遽ひーちゃんと同じ学校に転入する事になっちゃったから、よろしくー。]
と、メールを送ったら、即メールが返ってきて
[それって、確実にミキ君が原因だと思うわ。
だって、好きな人に好きな相手を紹介されたら、相手に嫉妬してしまうのは当たり前よ。]
なんて、よく分からない返信が返ってきてミキは首を傾げた。
[え?それって、アンジェラがオレの事好きみたいに聞こえるんだけど?
オレ達、そんな絶対有り得ないから。お互いに、恋愛感情持てないって何回も話してたし。
オレとアンジェラは、最低な話だけどお互いに都合の良い相手だったんだよねー。性欲処理もできるし、何でも話し合えるノリのいい親友みたいな?]
[…絶句だわ。だけど、私から見たらミキ君はどうか分からないけど、アンジェラさんは確実にミキ君の事を恋愛対象、異性として意識して見てるのが丸わかりだったわよ?
多分だけど同性愛とか別として。ノーマルの異性同士の友情って無いと思うわ。
きっと、片方がそう思っていても、もう片方が異性として意識してると思う。もしくは、お互いに意思してるけど気が付かないフリしてるとか。]
なんて、言われてミキは大きな雷に打たれた様な衝撃を喰らった。
…え!?
…アンジェラがオレの事…好き…???
いやいや!それは絶対に有り得ないっしょ!
あのアンジェラだよ?
ないないない!
と、どう考えてもアンジェラと恋愛が結びつかないミキは
[男女の友情は絶対あるしー。
アンジェラはちゃんと彼ピも居るし、セフレも居るのにオレを好き?ないない、絶対にないから。]
男女の友情は絶対あるという事と、アンジェラは自分の事を恋愛対象として見てない事を強く主張した。
[…ミキ君が、そう思いたいなら勝手にそう思ってればいいわ。こんな事、言い合ったって多分平行線のままだと思うから。
恋愛云々抜きにして。アンジェラさんは陽毬ちゃんに対して、敵対視して嫌味や見下す態度、それにかなり威圧的だったのは認識してる?
それで、陽毬ちゃんが萎縮しちゃって怖い思いをしてたのは知ってる?」
と、言うフジの問いかけに
何も覚えてないミキは
[アンジェラは、そんな事する様な奴じゃないよ。それに、ひーちゃんのそれはただの人見知りでしょ。]
軽く答えた。
[…今の回答で分かったわ。アンジェラさんは、確実にとても卑劣で残忍な方法で陽毬ちゃんに何かかしらするのは確定とみていいわ。
これは、陽毬ちゃんの未来にも関わる重大な事件になる可能性がとても高い。味方は多い方がいいけど、今回の件はミキ君には期待できない。
だから、私の方で何とかするわ。ミキ君は、ミキ君が思った様に勝手にやってればいいわ。]
それっきり、何度メールを送っても電話してみてもフジはミキに何の連絡をしてくる事もなかった。
…え?
なに?これって、オレが悪いって言いたいわけ?
意味分かんないんだけどさ!
フジちゃんも動くみたいだし、オレはオレで動くしかないか
なんて、ミキは軽く考えていた。
急ぎの事でもあったので食事が終わっても、リビングでフジとのメールのやり取りをしていたミキを心配そうに見ているカイラと苦笑いしているライガがいた。
そして、少し長めの時間を掛けミキのメールが終わった事が分かったライガは
「…あんま、何とかなる件じゃねーと思うぜ?」
なんて、ミキの心を見透かしたような口ぶりで苦笑いしながら声を掛けてきた。
…ドキッ!
「…なんか、心の中読まれてるみたいで変な感じ。」
なんて、軽い口調でヘラヘラしているミキ。
「まあ、俺は過去世全ての記憶持ってるからな。長く生きてるって言っても過言じゃねーと思うぜ?その分、様々な人生経験も豊富って言えるかもな。
なにせ、過去の罪で処罰を与えられて5回母体の中か、生まれてから直ぐに虐待って拷問を受けたり様々な方法で処刑されてきたんだからな。
その母体の中からも、耳や目が無くても外の様も見る事ができるし聞こえるし母親の感情もダイレクトに伝わる。前世の記憶や心、意思を持ったままの俺は、頭や心は大人なんだよな。
だから、この親達に何が起きてるのか母親は何を考えてるのか分かっちまう。それが、二か月だったり、五か月だったり赤ん坊として生まれて数ヶ月だったり。
その間に、様々な人間模様を見てある意味体験までしてんだ。マジで、色々あったぜ?
世の中は残酷でできてるって、こういう事かとも感じたし男女間のいざこざはマジでやべー。」
と、聞いて、ミキとカイラは、これはライガの前世の体験談も入ってるなと察した。ライガは隠してるつもりらしいが分かりやすい。
「そんな俺が見てきた中で、男女間の友情なんて一回も見た事がねー。
幼馴染だの、男女の垣根を超えた友情だとか性別関係なくだとか、よく耳にしてたし自分もそうだった時期もあったが異性同士何にもねー訳ねーんだわ。
あるとしたら、相手が不細工だったり貧乏、低スペックだった場合には、恋愛感情無しの友情ってのはあり得るかも知んねーけどな。
片方がイケメンもしくは美女だった場合は、イケメンや美女は低スペックな異性の親友に恋愛感情なんて絶対あり得なくても、低スペックの方がイケメンもしくは美女の親友を異性として見てる可能性はバカ高いぜ?
それが、お互いがイケメンだったり美女だった、ハイスペックだったり、何かに特化して注目の的な奴だったりな?
それだと、話はまた全然変わってくる。
そういう時って、必ずって言っていいほどお互い異性として意思してる。だから、親友で恋愛感情ないとか言いつつエッチする奴らが多い…てか、そういう奴らってみんなシてんじゃねーの?って、俺は思っちまう。
確かに恋愛感情無くてもエッチはできるけど、エッチする相手も選ぶだろ?つまり、そういう事だと思うぜ?
そもそも、親友とか友達って言っておいてエッチしてるあたり完全にアウトなんだけどな。
それは、置いといて。
そこで、ほぼ必ず出てくるお決まりが、片方は深い悩みからノリが合って一緒に馬鹿騒ぎできるエッチもできる都合のいいヤツ。
もう片方は、実は親友に恋してて親友に嫌われたり今まで通りの関係が壊れる事を恐れて、親友という恋するヤツに合わせてるだけ。
だけど、やっぱり自分を異性として意思してほしいが為に、親友に嫉妬してほしくてワザと恋人作ったり別のセフレ作ったりしてアピールする。
しかも、親友に好きな人ができた或いは親友を好きな奴を知ったりすると、ワザと相手に
“自分達は親友でお互い恋愛感情ないから。だけど、コイツとは腐れ縁で付き合い長いから聞きたい事あったら、いくらでも聞いてよ!”
ってな?相手を威嚇して牽制する奴も多いな。
中には、マジもんの男女の垣根を超えた友情で結ばれた親友っているかもしんねーけど極々稀だと思うし、
それこそ本物の親友なら、当たり前だが体の関係なんてないし相手の恋愛の邪魔なんてしねー。むしろ、応援するだろ。
それにお互いが異性ってのもあるから、お互いやお互いに大切な人の為に過度な接触はしねーだろうよ。
周りから見ても、そういう奴らは本当に親友で異性として意識してねーって分かるもんだ。
これが、俺の人生経験で経験したり見たり聞いた男女の垣根を超えた友情の話の感想だ。以上。」
と、自分の経験談を語り、ミキにアンジェラの気持ちがどれに当てはまってるかライガとカイラによっては一目瞭然であったが
ここまで言っても、ミキは首を傾げあくまでも自分達はエッチしてた仲だけど恋愛感情なんてないと一貫していた。
その様子に、ライガは
…あ〜、ミキは何を言っても、それを想定、想像、推測したり、相手の気持ちを考えたりする柔軟な頭を持ってないって事な
自分が直接体験して初めて身を持って分かるタイプか
……それじゃ、今回の件はミキにはかなり厳しいかもな?
フジが動いてくれるからそこは安心か
…いや、だが待てよ?
ショウ様が、自分が言えるギリギリまで必死になって陽毬の事を伝えようとしたって事は、マジでヤベー事が起こるのは確かだ
それに、ショウ様が最後の最後までかなり強い眠気と戦いながら踏ん張って伝えてきたワード
“赤ちゃん”
…嫌な予感しかねーし。“そういう事”だって想像しちまう
それは、かなりヤベー話だろ
陽毬の今後の人生に関わってくるような、そんな話だって事だろ?
…ミキはこんな調子だし、大丈夫か?
…はあ…
だから、フジはミキに憤慨してフジが周りにも強力してもらいながら単独で動くって話になったのな
納得だ
と、頭を抱えてしまった。
ライガもフジも、何をそんなに慎重かつ深刻になってるのか不思議でならないミキ。
別に陽毬に意地悪する相手がアンジェラだって分かってるんだから、ミキは陽毬と同じ学校に編入するんだし登下校や休み時間など一緒に居れば何かあっても陽毬を守ればいい。アンジェラに注意すればいいだけの話だ。
アンジェラなら、ミキの話を直ぐに分かってくれてそこで一件落着でしょ?チョロい、チョロい!
なんて、ミキは余裕しゃくしゃくである。
そんなミキに頭を抱えながらも
「…そろそろ、ショウ様の看病行ってくる。」
ライガは過度な看病で過労でぶっ倒れそうな桔梗を補助しに、パパ、ママ軍団で交代制で
ショウの看病と共に、自分一人で十分だと聞かない桔梗を無理矢理にフォローしに行くのだ。
今回はだいぶショウの症状が和らいだという事で、ショウや桔梗に助けてもらったお礼がしたいのと同時に予言の言葉を発した事で、ショウにどのような負荷が掛かるのか
これから宝来家でお世話になる身な事と、何かお手伝い出来ればという気持ちが大きく
カイラは実際にショウの症状や周りの人達がどの様に動いているのか見て、知っておきたいと考えていた。
ミキは予言してもらって陽毬が傷付く事を事前に防げそうなので、そのお礼と予言で体調崩してしまったショウのお見舞いに行こうと軽く考えていた。
だが、ライガに着いていく形で宝来本家を訪問した時から、二人にとって衝撃的な光景が広がっていた。
中に入ると、家中がどんより静まり返っていてメイドや使用人達も、なんとも言えない表情をしながら自分達の仕事をしている。時折
「…ショウ様…今回、長引いてるね。何とかしてあげたいけど…」
「……どうして、予言の言葉言っちゃうかなー!?
いくら、相手が可哀想でもさ。所詮、他人なんだしソイツの本来の運命なんだから、ほっとけばいいのにさ!
そのせいで、自分が苦しい思いするだけなのに!うちのショウ様は、ほんっとうにバカ過ぎる!」
「…ショウ様のあんな姿…やだぁ〜!いつもみたいに元気に笑ってくれなきゃヤダー!」
なんて、会話もポツリポツリと聞こえてくる。
そしてショウと桔梗の部屋に先にライガが入り、今まで看病していたママとバトンタッチする会話とショウのお見舞いにくるって言ってた二人がいるという話もしていた。
それから、直ぐにライガとママらしき人物が出てきて
ライガに劣らずの美女が憔悴しきった顔をして、美しい顔も台無しに泣き腫らした顔で何度も後ろを振り返り名残り惜しそうにしていた。
そんな彼女にライガは、一言二言声を掛けるとママらしき美女は小さくうなづきミキやカイラを見る事もなく、何度かショウ達の部屋を気にしながらフラフラと力無く家を出て行った。
その異様な雰囲気に、カイラとさすがのミキもなんとも言えない気持ちになり不安気にライガを見た。
すると、ライガは苦笑いしつつも部屋の中に入るよう二人を促した。
部屋の中を見たミキとカイラは驚いた!
何を驚くって、部屋中に見た事も聞いた事もない魔法陣が無数にあったから。部屋の中に入ると、神聖なる空気とヒーリング効果など様々な魔道の効果でミキもカイラも元気いっぱいになって今までにないくらいに体に羽でも生えたようにとても軽くなった。
そして、見た事もないくらいに大きく高価そうなベットの真ん中には、顔を真っ赤にしながら滝のような汗をかき呼吸も苦しいのか少し涙を流しながら眠っているショウの姿があった。
そのすぐ側で、ショウの汗を優しく拭き取りヒーリングを施しながらショウの看病をしている桔梗の姿。
雷我はすかさず、ショウの側に行きショウの手を握ると自分の額に当て
「ショウ、ライガパパが来たぞ。大丈夫、大丈夫だ。すぐ良くなるからな。大丈夫。」
と、ライガはショウの眠りの妨げにならないように元気付ける言葉を囁いている。そして、悲痛な面持ちで祈るようにショウを見ている。
それから、桔梗の様子も気にかけている。
ミキもカイラも、まさかショウがこんな状態になっているとは思ってもなかったので言葉を失い、ただただその光景を見ていた。
そんな様子の二人に、ライガは椅子に座るよう促しメイドに二人に飲み物と茶菓子を出してくれたが、二人はとてもそれを口に含む事なんてできなかった。
それを見て、ライガは
「今回は“まだ、マシな方”だ。ヒデー時は……可哀想過ぎて言葉にもしたくねーな。
とりあえず、これがショウが予言の言葉を発した“代償”だ。だいぶ、楽になったみたいだからカイラとミキを連れて来た。
これから、宝来家で暮らす事になる二人に知ってほしかったって事と、ショウが予言を言いそうになった時には出来るだけ止めるようお願いしたい事もあってな。」
そう話すライガは次に、桔梗を見ると
何回かショウの看病で、何回か桔梗が過労で倒れた事があるので桔梗からも目を離せない。
ショウは、予知を口に出すとその内容の重大さと大事な部分を喋る回数によって重さは違うが、
本人の例えによれば、インフルエンザにかかって高熱を出している感覚に似てるそうだ。
滅多にない事ではあるが、ショウが予知を口に出して体調を崩す度に苦しんでる我が子が可哀想で心配で…代われるものなら代わってやりたいと心苦しくなる。
そして、早く治ってくれる事を祈るしかできない自分がもどかしくて情けなく悔しい。
それは桔梗を含めショウの両親やパパ、ママ達みんな同じような気持ちだろうが。
…だって、こうなったらショウには何の薬も魔道も何も効果がなく、ひたすらショウの自然治癒に任せるしかできないから。
それを知っていても、思いつく限り荒れ狂ったように様々な治癒魔道や聖なる力、光魔道などなど、
桔梗ででしかできないだろう化け物じみた魔道を駆使して桔梗は
無駄だと分かりつつも奇跡を信じて、自分がやれるだけの事をライガ達がいくら止めようとそれを振り払ってショウの為に全力で向き合い続ける。
その他にも、動けないショウの排泄や入浴、着替え、栄養を考えたお粥を与えるなどなど介護までこなす。
それも、いつどんな変化があるか分からないという理由で寝ずに看病と治癒魔道を使い続ける。
いくら、化け物な桔梗でも倒れない訳がないのだ。
桔梗の気持ちが痛いほど分かるパパ、ママ達は、そんな桔梗を強く止める事などできない。
だから、桔梗には自分達ができる限りのサポートをし、ショウの手を握り
“大丈夫だよ、パパ、ママ、オブシディアン。
それに、桔梗もついてるからな。”
と、安心させる言葉を囁く。それくらいしかできないが、少しでもショウの側にいて安心させてあげたい。早く、治ってほしいと近くで祈りたいそんな気持ちでショウの側に居続ける。
そんな話を二人にした。
ライガの話を聞いて二人は神妙な面持ちになりつつ、ミキは
確かにショウちゃんは、具合悪くて大変かもだけどさ
たったこれくらいでみんなで大騒ぎして過保護過ぎない?
なんて、大袈裟過ぎると呆れてもいた。
その時だった。
さっきまで眠っていた筈のショウの目が開き、ミキをジッと見てきた。
…なんだろ…?
なんだか、凄く不気味なんだけど…
ショウに何かを見られてる感覚がして気味悪く感じ居心地が悪く感じるミキに
「……ど、どうして…?“何も変わってない”!!…このままじゃ、陽毬ちゃんが…っ!…ひま…んっ!!?」
酷くショックを受け泣きそうになっていた。加えて、何か意味深な発言をして、それ以上の何かを口にしようとした時
憔悴しきった様子の桔梗は青ざめ、慌てたようにショウが何か言い出す前に深くキスをしてそれ以上喋る事を許さなかった。
「…ショウ様!頼むから、それ以上言うな!!大丈夫だから。パパ達がなんとかするから!」
ライガも焦ったように、ショウに声を掛け何度もショウの手を握った手を自分の額にコツン、コツンと当てて何か祈ってるような必死さを感じる。
そして、すぐにライガはミキを見て
「ミキ!今すぐ、この部屋から出て家に帰れ!!」
そう叫んだ。ミキは、意味が分からなくて少し狼狽えたていたら
「聞こえなかったかっ!!今すぐ、ここから去れって言ってんだっ!!!」
ライガに鬼の形相で叫ばれ、酷く驚いたミキとカイラだったが言われた通りミキとカイラは素早くショウ達の部屋から出て行き自分達の家へと帰ったのだった。
…なんだったの?
なんだか、めちゃくちゃ怖かったんだけど〜
なんて、せっかくショウのお見舞いに来てあげたのに、意味不明に怒鳴られた挙げ句追い出され顔には出さないが気分を害してるミキだ。
そんなミキの気持ちを何となく読んでいたカイラは
「…さっき、ショウちゃんはミキ君を見て
“何も変わってない”
って、言ってた。つまり、自分を犠牲にしてまでショウちゃんが守りたいお友達の陽毬ちゃんの
“アンジェラさんによって、何か恐ろしい事をされる運命が何一つ変わってなかった”
そう、予測する事ができる。」
自分が考えた推測をミキに話した。
それを聞いて、解決策は万全なのにどうして?と、首を傾げている。
やっぱり、どうしてもお互いの傷の舐め合いをして付き合いの長いアンジェラが、人に酷い事をするなんて考えられなかった。
それに、酷いって言っても陽毬本人の前で悪口を言って傷付ける程度だとミキは考えているので、みんな大袈裟過ぎるとアンジェラをどんな悪者にしたいんだよとアンジェラを擁護する気持ちしかなかった。
そんな、ミキの前に
「……テメー、どーやってくたばりてー?魂ごと消し去ってやる!!」
大魔王…もとい桔梗が、今にも人を殺しそうな凶々しいオーラを纏い、いきなり現れたのだ。
何もない所に、音もなく現れた桔梗に心臓が飛び出るかというほど驚きすぎてミキとカイラはめちゃくちゃ大きな声で絶叫した。
ひとしきり叫んで落ち着いても、しばらくの間心臓がバクバクしていた。
…心臓に悪いから、いきなり現れるのはやめてほしいと思うミキとカイラだった。