名前のない星座


よかった、久しぶり土いじりしなくて済む。最近の放課後はバイトか園芸部かのどちらかだったから。


「雨美、1年女子が呼んでる」


男女問わずすっかり呼び捨てされるくらいの仲になった渋木雨美。いくらもともと話す機会があったやつらばかりでも、人との距離感、おかしいだろ。


「1年生の女の子?」


廊下からこっちを覗いている。反応的に面識はないらしい。


「雨美姉、なんかの部に勧誘してたりするの?」

「しないしない。あ、中入ってきてぜんぜんいいよー!」


いや、上級生の教室とか気まずいだろ。気遣いのかけらもない。


「椅子はこれね。あ、ちょっと待ってね。紅茶飲める?」

「あ、は、はい」


その返事を満足そうに聞き届けると、教室の後方に置いた紙コップにティーパックを入れて、ポットからお湯を出しはじめた。

あれはたぶん渋木雨美の私物。カフェ気取り。


「3年生の教室にはポットがあるんですか?」

「あれは渋木雨美が勝手に持ち込んでるやつ。なんだかんだ毎日ちゃんと洗ってるから衛生的には問題ないよ」


おれも最初の頃は戸惑った。私立の進学校だ。それなりに厳しい。

だけどなぜかこの学園の先生たちはあの女に甘いし弱い。


「はいどーぞ」

「急に来たのに、ありがとうございます」

「いいのいいの。お名前は?」

「津雲ゆいです」

「つくゆいちゃん、深刻な顔してどうしたの?なんか悩みごと?お勉強なら教えられるよ」


いいから黙って聞いてやれよ。せっかちだな。

< 16 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop