名前のない星座
どうせなら泣けばいいのに。泣いてくれたら、どうにかできるのに。
「部活にも学校にも行けなくって、行く意味を持ってなくて、なんで生きてるんだろーって」
目の前にいる渋木雨美と、渋木雨美から語られるいつかの渋木雨美が、結びつかない。
「…そのとき、傍にいたかったな。出会っておきたかった」
そうしたらおれは、きっと今より渋木雨美を知れていた。こんなふうに過去を遡らせなくても、一緒に辿っていけた。
不貞腐れてしまう一番の理由は、どうしようもできないもので情けない。
なのにくだらないおれに、渋木雨美はやわく笑いかけてくる。
「だけどわたしができれば天国に行きたいって思えるようになったのは、森平銀星と会えたからなんだよ」
何もできてない。
何をしたらいいかわからない。
もらってばかりで何も渡せていない。
おれが思うおれと、渋木雨美が思うおれは、結構ちぐはぐで、時々物語を聞かされているんじゃないかと思うときがある。
ぎんせい、と、細い声が呼ぶ。手の甲を、銀色を爪先に冠らせたひとさし指がつついてくる。
「いつか、になると思うけど、いつか、いっしょに泳いでくれる?」
その指を、できるだけ優しく掴む。
「水着は無地ビキニ一択で」
「え!スク水しか持ってないよ!しかも5年前の!」
「…スク水でもいいけど、それ着れんのかよ」
「太ったの、銀ピョンと食べるごはんがおいしいせいなんだからね!?」
「知らねーよ」
おれは天国なんて考えたこともないけれど。
あんたがいるこの場所や時間、今までとこれから先の記憶のことを言うんだろうなって思うよ。