名前のない星座
「プール行かなくていいのかよ」
土曜日の昼下がり。補習と学園行事以外ではじめて休日に校舎にきた。
まだ慣れない教室に行くと、慣れたように窓際に立つ渋木雨美がいた。
「ちゃんとメッセージしたよ?」
「見てなかった」
「プールサイドまで行っちゃってたね。みんなとは部活が終わったらこの教室で待ち合わせしてるの」
教室から温水プールが見える。知らなかった。
「ぎんじろー、人見知り発動させてたね」
いや、あんたがいると思ったらいなくて焦っただけだし。
「あとでみんなに紹介するね。みんなのことも紹介するね」
「…なんて紹介してくれんの?」
「もちろんカワイイ年下同級生、だよ!ぎんたはぶっきらぼうなところがあるから、ちゃんとわたしがかわいさを伝えてあげなくちゃね」
はあ。伝えなくていいし。かわいくないし。
だけどそれは、どうでもよかった。
もっと違うことが本当は言いたいし聞きたい。教えてくれないことをいつも面白くないと思うのになかなか聞けない。
けっきょくおれがただ不貞腐れているだけ。
「銀星」
無理をしてほしいわけじゃないんだ。
子どもがなんでも知りたがっているような、ダサくてダルい感情に、付き合わなくていいんだ。
「あのころのわたしね、身体と心かべつの場所にあるみたいだった。深い海の底と高い空の上。取り戻してちゃんとひとつに結びつけたいような、そうじゃないような……何でもあきらめちゃいたくなって、投げやりな気持ちになって、だけど、あきらめるほどのものは何も持ってなかったの。何にもなかったの」
だから、泣きそうな顔は、してほしくない。