極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「気乗りするとかしないとかじゃないっていうか……」

「わかった」


言い淀む私の気持ちを汲むように、彼が息を小さく吐く。


「じゃあ、もう少し時間を置こう。急がなくていいから、前向きに考えておいて」


ひとまず今夜は折れてくれたことに、密かにホッとする。


反面、こうして私の気持ちを尊重してくれるたび、申し訳なくなってしまう。
私なりに樹くんを気遣っているつもりなのに、もしかしたらその方向性が間違っているんじゃないかと思うこともあった。


「そんな顔しなくていい。芽衣には芽衣の考えがあることくらい、わかってるから」


優しい笑みを向けられて、胸の奥が高鳴る。
咄嗟に視線を逸らそうとしたのに、それよりも一拍早く彼の手が伸びてくる。


刹那、唇が重なった。
ふわりと触れては、名残惜しそうに離れていく。もう一度与えられたキスも、思わず受け入れてしまった。


「樹くん……」


けれど、今夜こそ流されてはいけないと、樹くんの胸元をそっと押す。
すると、その手を彼に優しく掴まれ、手首にくちづけられた。

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