極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「あっ……! もしかして鈴木(すずき)鈴木くん?」

「やっぱり大森だ! 久しぶりだな!」


男性の中にあった面影から高校の同級生の鈴木くんだと気づき、懐かしさに思わず笑顔になる。


「大森、ここで働いてたんだ?」

「うん。この春からね」

「そっか。あっ、俺はJSAの航空整備士をしてるんだ。……って、悪い。注文しないと迷惑だな」


苦笑した彼は、期間限定のフラペチーノを注文して「あのさ」と笑った。


「今度、飯でも行こうよ。連絡先、変わってない?」


鈴木くんとは二年間同じクラスだったこともあって、そこそこ仲がよかった。今では同窓会で会う程度だけれど、ついあの頃のように頷きそうになってしまう。


とはいえ、私は一応は人妻だ。そう思い直し、曖昧に微笑んで受け取りカウンターに誘導した。


次に並んでいたお客様を促し、思わず目を見開く。


「コーヒーひとつ」


奇しくも、鈴木くんの後ろにいたのは樹くんだったのだ。


パイロット制服姿の彼は、今日は北海道(ほっかいどう)新千歳(しんちとせ)空港に行っていた。
昨日聞いた話から考えると、羽田に到着してからそう時間は経っていないはず。

< 77 / 143 >

この作品をシェア

pagetop