極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「樹くんが結婚してたって、芽衣さんは知ってた?」


訊かれたくないところを突かれて、目を見開いてしまう。


「今朝、樹くんから報告されて……。それも、もう三か月も前のことらしいのよ。指輪もしてないし、彼女がいることすら聞いてなかったから、すごく驚いたの」


複雑そうに微笑む彼女の表情は、本当に信じられないと言わんばかりだった。


「芽衣さんは幼なじみだし、なにか聞いてたりする? こんなことを訊いてしまってごめんなさい。でも、まだ信じられないから、どうしても気になって……」


きっと、シラを切ることはできる。適当に言い訳して逃げるのは簡単だと思う。


けれど、馬場園さんの真剣な目を見ていると、ここでごまかすのは憚られた。なによりも、嘘を突き通すことへの罪悪感が大きくなった。


「……私、なんです」


深呼吸をして静かに告げれば、彼女は静止したあとでためらうように首を傾げた。


「えっと……樹くんの結婚相手が芽衣さん……ってこと?」

「はい」


直後、馬場園さんの顔から温度が消えた。

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