極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「どういうこと？　あなた、樹くんとは幼なじみって言ってたわよね？」


冷たい視線を寄越され、罪悪感と申し訳なさから身を小さくしてしまう。
ただ、これからなにを言われても、彼女の怒りをきちんと受け止めなければいけないと思った。


「すみません……。幼なじみだというのも本当ですが、あのときはどう言えばいいのかわからなくて……」


これも本当のことだ。


それに、あの時点では樹くんも上司や人事部にしか報告していなかったはずだし、どちらにしても私から真実は言えなかった。
あまり大っぴらに言いたくなかったのもあるけれど、そもそも彼の同僚に私が先に話すわけにはいかなかったから。


「いつから付き合ってたの？　式はもう挙げた？」


馬場園さんもそれは察したのか、あからさまなため息をつきつつも話の内容を変えた。


「付き合った期間はそんなに長くはなくて……。式も挙げてません」

「挙げないつもり？」

「えっと……相談中というか……」


こんなこと、答えなくてもいいとは思う。
彼女には言う必要がないことばかりで、私に答える義理はない。


それでも、自分の中にある樹くんへの気持ちに気づいた今、ごまかし続けるようなことはしたくなかった。

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