初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


「それから、ミッチー」
「はい」
「今夜は……ちゃんと部屋に来てくださいまし」
「……」

 石のように固まる私の頰に、ステファニーはむちゅーっと口づけをすると、「ふふっ、ほっぺにルージュがついてますわよ旦那様♡」と言いながら楽しそうに去っていった。

(ど、どうしたらいいんだ。いや、ここから先は好きにしていいということじゃないのか)

 何故か初夜よりも緊張しながら、夜、私は共寝用の部屋で彼女が来るのを待っていた。

 何故私の方が早くに部屋に来て待っているのかって?
 女性の初夜のための準備は、それはもう果てしないのだ。
 あの頬への口付けの後、「時間がありませんができる限りのことをいたします」という気合に満ち溢れたメイド長に攫われたステファニーは、夕食にも姿を見せなかったし、何時になったらこの部屋に現れるのかも私にはさっぱり分からないのだ。

(本当に来てくれるんだろうか……)

< 101 / 104 >

この作品をシェア

pagetop