初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


 ソファと寝台を行ったり来たりしながら、私はただただステファニーを待つ。
 ことここまで至ると、妹達から借りた書籍は役に立たなかった。なにしろ、今書籍を読んでも全く頭に入って来ないし、書籍の知識を思い出そうとしても頭の中はステファニーで一杯なのだ。

(私はこんなにステファニーのことが好きなのに、どうしてあんな酷いことを言えたんだろうか……)

 今となっては、私は2週間前の私の気持ちが分からない。
 私は本当に、骨の髄までステファニーにメロメロキュンキュンであった。

 ――チリリリン。

 先触れのベルの音が鳴り、私はビクリと背筋を正す。

「若旦那様。若奥様が来られました」
「分かった。入ってもらってくれ」
「はい」

 私は高鳴る心臓を手で抑えるようにしながら、扉を見つめる。
 見つめていると――。

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