初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


「……! 離してください!」
「あ、いや、ええと……」

 気がついたら、私は彼女を抱きしめていた。
 こんなことをしたのは、正直初めてだ。

 いや、だってだな、そもそも彼女が私を拒絶しようとするのが初めてなのだ。
 私から何かする前に、彼女は常に私にまとわりついて、へばりついてきていた。
 だから、私から彼女を捕まえて閉じ込めておく必要なんて、今まで一度もなかったのだ。

 そんなことを思いながら、私は想像よりもずっと小さくて細い彼女の身体を、今度は意識的に逃さないように抱きしめる。
 私は割と背丈もあり体が大きい方なので、彼女の体はすっぽり包み込まれてしまった。

「は、離してくださいと言ってるでしょう!?」
「言ってるな。それと、私が言うことを聞くのかどうかは、また別の問題だ」
「理屈っぽい! 最低! そこが好き! ――ハッ」

 一瞬、いつもの調子を取り戻した彼女は、我に返った後自分の失態に慄いている。
 はわわ、と顔を赤くする彼女は、食べてしまいたいくらい扇情的で可愛らしかった。

「……旦那様、顔が真っ赤ですわ! 熱がおありなのでは!?」
「何もない!」

 くそ、このすぐ赤面する顔はどうにかならないのか。
 男なのに私は色が白いので、すぐに感情が顔色に表れて、彼女にいつもからかわれているのだ。

「……とにかく、離してくださいまし!」

 暴れる彼女に構わず、私は彼女を優しく抱きしめる。

 彼女には悪いけれども、彼女が私の腕の中に収まって、私はようやく気持ちが落ち着いてきたのだ。
 よく分からないが、昨日の夜からずっと、気持ちがざわついて仕方がなかった。
 だからこれは、私の精神を安定させるために必要なことなのだ。彼女が愛しくて抱きしめているとかそういうのではない。断じてない。

 こうして私は心を落ち着けたけれども、彼女はそうではないようだ。

 抵抗するのは諦めたようだが、私の腕の中で震えながら静かに泣いている。
 いつもだったら、私にひっついている間はニコニコ微笑んでいたのに、今日は悲壮な様子のまま、目も合わせてくれないのだ。

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