初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい
そう思って俯いていると、彼女が私に声をかけてきた。
「それで、お決めになったのですか?」
「え?」
「わたくしとの結婚を今後どのようにするのかをです」
そういえば、ステファニーは出て行く時にそんな話をしていたな。
正直、彼女の提示したどの選択肢もナシだったので、あまり深く考えてはいなかった。
しかし、どんな結婚にしたいのかであればすぐに答えることできる。
「君にとって幸せな結婚にしたい」
「離縁、それとも……え?」
「君が笑ってくれる結婚にしたい」
「いえ、その……」
「いつものように、君が笑顔で「ミッチー!」と呼びながら抱きついてくれる結婚がいい」
「……」
口を開けたまま唖然としているステファニーは、彫刻のように美しかった。
私はそんな彼女に赦してもらいたくて、必死に言葉を重ねる。
「でも私はちゃんと弁えている。君はまだ、私のことを赦せないだろう」
大丈夫だ。私ならできるはず。
何故なら、私はこの数日、『愛なし初夜シリーズ』を熟読し、考察を重ね、母と妹に嫌がられるくらい懇々と女性に対するマナーについて質問をしてきたのだ。
そう、私はクズなドブねずみ。
可憐で清廉なステファニーに、すぐ赦してもらえると思うような傲慢な心は、既に燃えかすほども残っていない。