初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい
「あ……わ、わたくしは…………赦」
「うん、そうだな。あんな酷いことを言った私のことを信じるなんてできないのは当然だ」
まずはジャブ打ちからだ。
私は妻の心に寄り添う、理解ある夫。
まずはステファニーの怒りに寄り添うことが肝要だ。
「え? いえ、そんな、わたくしはミッ」
「いいんだ、君の気持ちは分かっている。私が悪いんだ、君の気が済むまで私を罵って構わないし、私は君の信頼を取り戻せるよう、離縁だなんて言わせないよう、努力を重ねようと思う」
とにかく誠意を示すのだ。
次のチャンスがあると思うな。
『愛なし初夜シリーズ』では、一度の失敗が命運を分けることが多かった。
一瞬の油断が、生死を分けるのだ。
「ええと、離縁なんて」
「――やめてくれ! 私は君の口から離縁などという言葉は聞きたくない! 白い結婚も愛人も嫌だ、私に君以外の女性は必要ないし考えたくもないんだ! 私はようやく、君がいるだけで自分が最高に幸せだったことに気がついたんだ」
り、離縁だとぉ!?
ステファニーの口から恐ろしい言葉が出てきた。
なんだ、私は既に何をしくじったのだ!
待て、待ってくれ、全部私が悪かったから!!
「……で、でも昔、恋をしてみたいって」
「恋なら今している! 君が私以外にばかりかまけていたこの1週間弱、私の心の中には君しかいなかった。何をしていても君との思い出ばかりが頭をよぎるし、君の笑顔を思い出しては胸が痛くて仕方がないし、君を独占する私の家族が憎くて仕方がなかったし、君をいつ攫おうかずっと考えていた……おそらくこれが、恋…………」
しくじったのは学生時代の私だったようだ!
今の私は、クソ青二才だった頃の私を消し去ってしまいたい!!
今の私にはステファニーしかいないんだ、どうやったら信じてもらえるんだ……!
「それってもう、わたくしを愛しt」
「愛といえば、君の愛情に甘えていた私は、心から愛を理解できてはいないと思う。それでも、今の私にも分かることが一つだけあるんだ!!」
一週間という短い期間で、愛を分かったような顔をしてはいけない。何故なら私は、『愛なし初夜シリーズ』の夫勢と同様のことをした、無神経なドブネズミ。この短期間で愛を理解したような顔をしたら、あっという間に拷問離縁コースである。
そんなクズゴミな私ができることは、ただただ許しを乞い、心からの叫びを伝えるのみ。
私は、机に身を乗り出すようにして、彼女に訴えかける。
「これからの人生を君と過ごしていけないなんて、絶対に嫌だ! 私は失った君の気持ちを、これから取り戻してみせる!」
結局机を回り込んでステファニーの右手を握りながら、私は誠心誠意を込めて、メガネ越しに彼女を見つめる。
彼女は、ほんのり、いや大分しっかり頬を染めながら、耳まで赤くなった状態で、ポツリと呟いた。
「……それは無理、ですわ」
――なんと彼女の気持ちはそこまで私から離れてしまったのか――!!
いや、それもそうだ。
私はそれだけの酷いことを言ってしまったのだから――……!!